仙人池(個人山行)山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

仙人池 
2013年9月28日(土)~10月1日(火)

 6月、新居浜の徳増さんから秋に立山~剱岳~仙人池~阿曽原~欅平を6泊7日で踏破するので一緒しないかと誘いを受けた。 以前から紅葉の仙人池からの剱岳を撮りたくてその機会を狙っていたので、全コースは無理でも数日は同行したいと思っていた。9月中旬になって具体的な日にちや計画を等を聞くと彼の勤めの関係と私の都合で日程がうまくかみ合わず、9月30日に仙人池から室堂へ帰る私と、剱岳を登ってそれから仙人池へ向う彼が交差する剱沢小屋で共に1泊できるだけとなってしまった。
 私の行程は室堂~剱御前小屋泊~仙人池山荘泊~剱沢小屋泊~室堂の往復の3泊4日だ。
 剱沢~仙人池ははるか昔の1965年の夏(黒四ダム完成は1963年5月、大町トンネルの観光運用は1964年8月、立山アルペンルートの全開通は1966年6月。今年は黒四ダム完成50周年にあたる)の黒部ダム~平ノ小屋~五色ヶ原~立山~剱沢~剱岳~池ノ平、仙人池~阿曽原~欅平の6泊7日の単独行、そして1994年10月中旬の黒部ダム~内蔵助平~剱沢~池ノ平、仙人池~阿曽原~下の廊下(S字峡、十字峡、白雲峡)~黒部ダムの2名でのテント泊山行以来の旅となった。

9
月28日(土) 
晴れ
 大阪駅から富山行き特急サンダーバードに乗る。京都駅付近で踏切のバーが折れる事故があり、安全確認ということで起きた13分遅れで富山駅に着く。富山駅では駅の改修工事でホームから改札口までが大きく遠回りさせられる。富山地鉄の駅までが随分と遠い。予定していた地鉄の快速電車はすでに発車してしまい、40分後の普通電車に乗る。この後の乗り換えはスムーズで13時40分に室堂平に着いた。
 付近の紅葉は今ひとつと言った感じで、ナナカマドが赤く染まるはずの雄山の麓も茶褐色でさえない。紅葉が遅れたところに寒波が来て、霜が付いてしまったらしい。
 みくりが池、雷鳥平、そして称名川の橋を渡って雷鳥沢コースを登る。雷鳥平や蒸気をあげる地獄谷を見下ろしながら登る。室堂平も低く見えてくる。浄土山、一ノ越、立山三山から真砂岳へ稜線が続いている。別山や真砂岳の裾野の紅葉はもう数日できれいになりそうだ。
 雷鳥平から2時間の登りで剱御前小屋に到着した。宿泊者は定員の半数ほどでゆったり泊まれそうだ。
 夕食までの時間、剱御前のピークへ出かけ夕陽に染まった剱岳をカメラに収めた。
 ビールと共に頂く夕食はうまかった。部屋の相客は4名で酒を飲みながら山の話が尽きなかった。
 この夜は薄い雲が広がり、星の数も少なかったが、眼下に見える富山市の街の明かりが見事だった。

     
 富山地鉄の立山町から見た剱岳
大窓、池ノ平山、小窓、三ノ窓、剱岳、剱御前、奥大日岳
   賑わう室堂平と立山
     
 雷鳥平キャンプ地と雄山、一ノ越、浄土山    雷鳥沢登山路から雷鳥平、地獄谷そして称名川上部
を見下ろす 称名ノ滝は更に下流
     
 剱御前からの剱岳    剱御前から同小屋、別山、真砂岳そして立山三山を見る
右奥に槍、穂高が見える

9月29日(日) 晴れ
 朝4時前に起きだして外へ出ると24日の月ながら、月は結構明るく夜空に照っていた。そのそばにオリオン座の星々が輝いていた。
 5時過ぎ雲もないのでご来光を見に別山まで出かける。赤い光が後立山の北方から徐々に南へと移って行く。5時40分に爺ヶ岳の向うに陽か登ってきた。冨士山もきれいな形を見せていた。
 朝食後剱沢へ下る。何人かが逆コースを登ってくる。下のキャンプ場にはテントが10張りほど設営されていた。
 県警パトロール詰所からさらに下ると分厚い石壁で囲まれた剱沢小屋に着いた。これまでに何度もなだれに流され、付加行きに押し潰されては建て直した小屋だ。正面には剱岳がどっしりと腰を据え、天を突いている。
 ここから剱沢への路を下る。標高2150m付近で雪渓に降りて6本爪アイゼンを履く。アイゼン着用で時間を食っている20程のツアーパーティをここで抜く。
 左側から平蔵谷の雪渓が合流してくるがさらに硬いスプーンカットの雪面を下って行く。長次郎雪渓合流点まで来ると剱沢雪渓の末端が下に見えて来る。ここで雪渓の左側に向けて逃げて、谷の斜面に付けられた荒れた踏み跡を真砂沢ロッジに向け下るが、路が不安定で歩きにくい。
 ロッジでは小屋じまいの最中だったが、水道栓付きの水場がありその水で喉をうるおしてひと休みする
 ここからは左岸の潅木の中の路をたどるが、アップダウンや小沢の渡りもあり、それほど楽とは言いにくい。更に行くと鎖を張ったヘツリがあり、最後は河原の石の間を左岸沿いに進むなどして二股に着く。大きな近藤岩が目安になる。二股の橋はスチール製の吊り橋だが、もう少しすると雪崩で流されるのを避けるため取り外されるはずだ。このコースを2度目に通ったときは橋はすでにはずされていて、石の上を飛び越えて対岸に渡った。
 二股から仙人山へは傾斜もあり、林の中のうっとうしい路が続く。日影で温度計を見ても29℃もあり、真夏と同じ暑さでつらい登りだ。とにかく最後の登りとこの標高差550mを登る。
 やがて木々の丈も低くなり、三ノ窓雪渓やチンネやクレオパトラニードル等の裏剱の針峰群が素晴らしい景色を見せる。そして小窓雪渓もすぐそこに見えるようになり、実に楽しい。日本の山岳風景の中でピカイチと言える景色だ。
 やがて仙人山山頂近くの池ノ平と仙人池ヒュッテの分岐に出て、東へゆるやかな尾根を下るとヒュッテに着いた。
 小屋の周りはナナカマドが若干紅葉していて、その向うには白馬岳から鹿島槍への峰々が連なっている。池の向うには逆光で暗くなった裏剱が険しいピーク群を見せていた。
 ヒュッテではうれしいことに風呂が沸かしてあり、この猛暑日の汗をすっかり流して気持よくなれた。
 夜は素晴らしい星空が広がった。天の川が剱岳から天頂へ延び、その流れの中のはくちょう座の十字が架かり、こと座のベガ(織女星)とわし座のアルタイル(牽牛星)が明るい。北東にはカシオペア座やアンドロメダ座の星々が輝いていた。仙人池には黒い剱岳と星が映り込んでいた。

     
 爺ヶ岳の奥、四阿山から出たご来光    朝陽を浴びた剱岳
     
 剱沢雪渓でアイゼンを着けている登山ツアーの人達    剱沢雪渓末端部 ここから左岸に渡る
     
 仙人山への路から三ノ窓雪渓と剱岳のチンネ等を見る    三ノ窓雪渓と剱岳のチンネ等の針峰群
     
 仙人池と裏剱 紅葉には少し早い    夜の仙人池と裏剱 天の川銀河の中心方向、いて座
から天の川が天頂に向って流れている

9月30日(月) 晴れ
 朝の赤く焼けた剱岳を撮るために池のほとりでカメラをセットして夜明けを待つ。陽が刺す前に剱岳は赤く染まり、陽が刺してからは赤から黄金色へと変り、池の面に映った逆さ剱もきれいに光った。風もなくきれいな鏡だった。
 外でレトルトの中華丼の朝食を取ってから帰路につく。朝陽を受けた剱岳がまだ輝いてる。鱗状の岩肌がきれいだ。
 二股まで下り、往路を戻る。真砂沢ロッジでは小屋仕舞で取水用のパイプははずされていて、昨日飲んだ水はすでに止まっていた。外に出ていた小屋の人が、取っておいた水を出してくれた。今年の紅葉や昨日今日の朝焼けの美しさなどを話してくれた。
 雪渓までの登りには歩きにくく苦労する。雪渓に入るとずっと楽な登りになる。雪渓の中端で昼食を取り、更に登る。雪渓を出てから更に400m近く山路を登るとようやく剱沢小屋に着く。
 ここで会うはずの徳増さんは前日に宿泊手続きをしていた。今日は剱岳へ出かけていて、まだ戻っていない。小屋の外で周りの景色を眺めていると、徳増さんも戻ってきた。登るだけでなく写真撮影なども楽しめたらしい。
 この夜は同室で積もる話などに花が咲いた。明日彼は仙人池に泊まり、更に阿曽原、そして欅平へと長い路をたどることとなる。

     
 仙人池に映った逆さ剱    仙人池と裏剱 
     
 剱岳上部と小窓雪渓    剱沢小屋で四国の山仲間だった徳増さんと会う

 10月1日(火) 晴れ
 この朝も晴れてはいたが陽が東の薄雲にさえぎられ剱岳はきれいにはならなかった。仙人池へ向う徳増さんを見送ってこちらも出発する。小屋の少し上に来た時、剱岳に陽がきれいに当たりはじめ、一瞬にして山が黄金色に染まった。あわてて好ポイントの小屋の前に引き返し、何度もシャッターを切った。特に山の裾のダケカンバに覆われた支稜の斜めに走る陰陽のコントラストが見事で、今回の撮影行の中で最もお気に入りの一枚を撮れた。なんとも危うい幸運だった。
 別山乗越の剱御前小屋へはさして苦労せず登りきり、雷鳥沢を下る。
 立山方面は3日前よりも紅葉が進み、随分と赤みが増している。別山の支稜や真砂岳の山裾、そして奥大日岳は特にきれいになっている。写真を撮りながら称名川の渡しまで下り、持参した食料で残っていたレトルトカレーで早い昼食を取る。河原で仰向けになり、紅葉に囲まれた青い空を眺めて立山の秋の空気を吸い込む。時折登山者が橋を渡って行ったがそれも気にせずのんびり時間を過ごした。
 その後、荷を置いて空身で真砂岳の裾の大走りまで散歩する。春は一面の雪原になるところだが、今はチングルマの紅葉と白い実の綿毛の原となって広がっている。周囲の山の斜面の紅葉も美しかった。
 みくりが池温泉で入浴し、遊覧客で賑わう室堂に着く。バス、ケーブルカーと乗り継いで富山へと向う。富山地鉄と富山駅の乗継ぎでは前を2名の若い女性登山者が走っているので、列車の出発が迫っているらしいとこちらも走る。改札で「2分後発車です。もう間に合わないでしょう。」と言われたがとにかく走ってみた。荷を背負ったままあの長い迂回路と階段を走るのは正直つらかった。切符を購入するため遅れたあの女性達も後から走ってくる。車掌が手を上げていてまさに間一発のタイミングだった。ドアに立ち女性が階段から降りる数秒を稼ぐ。彼女らは一旦あきらめたそうだが、"オジさん"が走っているので頑張って走ったとか。大阪まで帰るらしい。こちらもおかげ様で予約したサンダーバードよりひと列車早い列車に乗れ、夕刻に帰宅できた。 (清水)

追記
 私より遅れること7日、会員の村上さんが室堂~剱沢~仙人池~阿曽原~欅平のコースを4泊5日で踏破してきました。相変わらず元気です。
 仙人池付近の紅葉は良かったそうです。なかなか紅葉のベストの日にちを選ぶのは難しいものです。

     
 朝陽を浴びた剱岳    黄金色に輝く剱岳東面の支稜と影
     
 雷鳥沢で出会った雷鳥の雄    雷鳥沢コースのハウチワカエデ(黄)とナナカマド(赤)
     
 真砂岳の麓の草原と立山 草原の紅葉はチングルマ
そして一面の白い穂はナナカマドの実の綿毛
   雷鳥平付近から見た真砂岳
     
 奥大日岳とナナカマドの紅葉    別山北斜面の紅葉


参加者 会員1
(清水)

コースタイム

9/28(土) 9/29(日) 9/30(月) 10/1(火)
川西池田 6:43 剱御前小屋 6:50 仙人池ヒュッテ 7:00 剱沢小屋 6:05
大阪 7:01/7:09 剱沢小屋 7:30/7:40 二股 8:35/8:45 別山分岐 6:25/6:40
サンダーバード1号 剱沢雪渓下端 9:00/9:05 四ノ沢 9:25 剱御前小屋 7:10/7:20
富山 10:35 真砂沢ロッジ 9:30/9:35 真砂沢ロッジ 10:15/10:30 雷鳥沢 8:10/8:20
地鉄富山駅 10:40/11:17 四ノ沢 10:15/10:30 剱沢雪渓下端 11:15/11:20 称名川橋 9:00/9:25
立山 12:29/12:40 二股 11:00/11:05 昼食 11:40/11:50 大走り 10:00
美女平 12:47/12:50 仙人池ヒュッテ(泊) 13:40 剱沢雪渓上端 13:00/13:05 称名川橋 10:35
室堂 13:40/13:50 剱沢小屋(泊) 13:55 雷鳥荘 11:00/11:05
雷鳥平 14:40/14:50 みくりが池温泉 11:30/12:10
剱御前小屋(泊) 16:40 室堂 12:40/12:40
美女平 13:30/13:40
立山 13:47/14:24
寺田 14:56/14:59
地鉄富山駅 15:16
富山 16:22
サンダーバード40号
大阪 18:37/18:45
川西池田 19:05


 
 仙人池山行トラック

この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである。

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