大平山(オオヒラヤマ、地元ではオビラヤマと呼ぶ)を知ったのはそう古いことではなく、2004年に狩場山へ登った時のことだ。6月初めとあって、まだ雪もあり、宿の主人から登山できないと言われあきらめたのを思い出す。
この山は石灰岩の山で、石灰岩地帯特有の植生でその方面に関心ある人達には知られているようだ。
日本の有名な高山植物のお花畑はマグネシウムを含む岩石、橄欖岩や蛇紋岩地帯やカルシウムを含む石灰岩地帯が多い。前者には北から夕張岳、アポイ岳、早池峰山、至仏山、そして四国の東赤石山があり、後者は伊吹山が有名だが、今回の大平山の他、北海道芦別の崕(キリギシ)山、南アルプスの北岳などもある。
キタダケソウ、ヒダカソウ、そしてキリギシソウというキンポウゲ科の絶滅危惧種がそれらの地域に生育していることは7月5-7日の北岳の山行記録にも記載した。
今回の大平山にはヨーロッパアルプスの名花、エーデルワイスに最も似ているオオヒラウスユキソウと言う特異種が生育している。早池峰山には昨年も見たハヤチネウスユキソウがあり、今年その仲間のオオヒラウスユキソウに出会えるのを楽しみにした計画だった。
2012年7月21日(土)晴れ
昨20日、トムラウシ山登山を終えて、夕刻に渡島半島、黒松内まで移動し駅に近い及川旅館に入った。
コンビニで用意しておいた弁当で、朝食を済ましてから島牧へ向かう。
島牧の中心地を流れる泊川を越えたところで左折してこの川に平行する林道を遡る。二車線の立派な道だが、大平山登山口が終点だ。約8km行ったところで通行止めの柵があり、車が1台停まっていた。柵の向うは立派な鉄橋のナガセ橋で、この橋の手前側の岸の基礎部分が一昨年9月の出水で露出してしまったため、ここで通行止めとなっている。このことは事前にNETで確認できていた。ここからは橋の先の河鹿トンネル(1.2km)も含め1.5kmを歩くこととなる。トンネルも立派で、ライトも出すことなく、真っ暗な中を抜けることができる。
ナガセ橋の手前で林道は通行禁止
トンネルを出るとまた小橋の手前に柵があり、この先の潅木の中の踏み跡を80mも行くと自然環境保全地域指定された地域であることを示す立派な標識が2基建てられていた。山の東面674ヘクタールが"自然環境保全地域"に指定されている。全国で10箇所あるらしい。屋久島の花山地区の"原生自然環境保全地域"が全国で5箇所指定されているのに比べ少しゆるやかな規制地域だ。
ここからはっきりした登山路がついている。狭い急な道だ。暗い森の中の羊歯やフキの葉が覆いかぶさる急な路で、蒸し暑さもあって亜熱帯のジャングルの中を行くような感じだ。標高400m(以下"標高"は省略する)あたりで、こうしたジャングルから脱して、ブナ林の路になる。ここからしばらくジグザクが切られ登りやすい路となる。一旦500mで稜線に出る。涼しい風にふれてホッとする。ここでヒグマの新しい糞を見た。フキが主食らしく、繊維が多い黒い糞だった。
600m付近からはずっと稜線通しの道となる。ジグザグもなく急登が続く。右手の南斜面はミヤマシシウド、イワオウギ等の広いお花畑となっている。紫のヤマルリトラノオも咲いていて、伊吹山に感じがよく似ている。稜線の左は樹林帯、右はお花畑や草原と言う配置はずっと頂上まで続く。
イワオウギ ミヤマシシウドのお花畑
810mのピークに出ると1109mのピークが望める。その左に少し頭を見せているのが大平山の頂上かも知れない。
1100mの登りの中間から上は石灰岩の壁となり、その岩を登るところも出てくる。手を伸ばした先に白いフェルト状の花が咲いている。オオヒラウスユキソウだ。花も大きく厚い。見ればこれから上には岩壁のいたるところにウスユキソウが生えている。2〜3割が花を開いている。ミヤミオダマキやキバナカワラマツバ、イワオウギ、タカネナデシコそしてウツボグサ等が咲いてこの日で最も素晴らしい風景が広がっている。伊吹山に完全に勝っているように思えた。
キバナカワラマツバ 810mのピークから見た1109mピーク
オオヒラウスユキソウ タカネナデシコ
カンチコウゾリナ ヤマルリトラノオ
このピークを右から巻いて登るが、お花畑の中の路が、崩れやすい土砂で、登りにくい。さらに進むとダケカンバとハイマツの藪に入るが、正面に「立入り禁止」の標識とロープが張ってある。一旦少し戻って稜線に路を探すが、それらしい路はない。結局立ち入り禁止の標識の右のダケカンバの枝を潜ると路が続いていた。
ここで珍しい花、エゾハナシノブが咲いているのを見つけた。青い品のいい花だ。以前カムチャツカの山で見たことがあるが北海道では初めて見た。
エゾハナシノブ マルバダケブキとコヒオドシ
ここからはハイマツと背丈より高いササの藪の中を進む。しっかりした踏み跡がササの中に付いているのと、ロープもところどころ張ってあるので、慣れた登山者なら迷うことはない。しかしガスが濃いと頂上の方向を見失って危険かもしれない。1180mの小ピークからは草原の頂上はすぐそこだ。黄色のマルバダケブキ、シナノキンバイなどが咲いている。ハクサンチドリも咲いていたが、テガタチドリはすでに咲き終わっていた。
一等三角点がある頂上からは雲海の上、東に羊蹄山を望め、西には狩場山が見えた。北には寿都付近の海岸も見渡せた。
昼食の後、来た路を下るが、1109mピークからの下りはかなりの急傾斜で、雨天や雨後の登りや下りは苦労しそうだ。
朝には全く見なかった蝶が、午後になって暖まってきた気流に乗って上がってきたのか随分と花を飛び交っていた。この蝶を追う南井さんは楽しそうだ。
下山の後宿のユースホステルの隣の「道の駅、よってけ島牧」に寄り、土産を見たり買ったりしたが、ここで焼いたホタテを肴にした冷たいビールがなんとおいしかったことか。数年ぶりに味わう素晴らしい味だった。 (清水)
今回トムラウシ山登山について美瑛〜扇沼山〜三川台ルートの現状について情報をいただいたホームページ「一人歩きの北海道山紀行」を開かれている北海道の山の第一人者坂口一弘さんからメールをいただきました。その中の大平山についての個所を以下に示します。、
「トムラウシ山と我が道南の大平山と狩場山へのご訪問、お疲れ様でした。大平山は、今年は登山口まで入れないという情報は掴んでいましたが、
「一人歩きの北海道山紀行 by sakag」
http://sakag.web.fc2.com/
参加者 2名 会員(清水、南井)
コースタイム
7月21日(土) | |
黒松内 | 5:55 |
島牧町泊 林道13km | |
ナガセ橋 河鹿トンネル1.2km | 6:35/6:50 |
大平山登山口 | 7:15 |
稜線500 | 8:15 |
稜線600 | 8:30 |
810ピーク | 9:15/9:20 |
1109ピーク直下巻き道 | 10:25/10:30 |
大平山頂上1109 | 11:00/11:30 |
1109ピーク直下巻き道 | 12:15 |
810ピーク | 13:10/13:20 |
稜線500 | 13:35 |
大平山登山口 | 14:15/14:35 |
ナガセ橋 13km | 15:00/15:10 |
島牧町千走 道の駅 買い物 | 15:35/16:10 |
島牧YH泊 | 16:10 |