大台ヶ原~大杉谷山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

大台ヶ原~大杉谷山行記録

 黒部渓谷、清津峡と共に大杉谷は日本三大渓谷に数えられている。1985年11月に大台ヶ原から宮川湖へ抜けてからすでに30年以上経っている。その後2回の水害や台風による崩壊等で2002年から2014年までの間、堂倉滝から桃の木小屋の間が通行止めになるなどがあった。

 今回会行事としての要望もあり、大台ヶ原〜大杉谷山行を企画した。 アクセスの容易さ、所要時間、そして時間の自由度から大台ヶ原からの1泊2日の往復とした。 

6月4日(土)  曇り後雨
 夕刻から翌5日の午前中は雨模様との予報はあったが、日本一の雨量を誇る大台ヶ原や大杉谷では降雨は当たり前、大した雨ではなさそうなので決行する。 

 大阪梅田の集合場所から予定通り出発する。阪神高速、阪南自動車道で橿原に入る。ここからは真っすぐ国道169号線(東熊野街道)を南下する。3月行った高取山の麓の町も通り、新芦原トンネルを抜けると吉野川の流域となり川に沿って東へと方向を変える。川では鮎釣りの人達が流れに浸かりながら、長い竿を出していた。
 上市のローソンに寄り、弁当など仕入れる。
 川上村に入ると大滝ダム建設で付け替えられた新しい道を走る。2002年にダム本体は完成しながら、その後周辺の地盤が弱く地割れや地すべりが起き竣工は2013年にずれ、計画から半世紀以上かかったダムだ。
 さらに上の大迫ダム付近も道が上部に付け替えられ、長さ1.3kmの栗の木トンネルや半分トンネル、半分橋梁(ループ半径160m、橋の高さ60m、2003年供用開始)というループもできてここ10数年で大きく変わった。このループはなかなかの見ものだ。

 伯母峰トンネル手前で大台ヶ原道路に入る。雨粒が一瞬フロントガラスに着いて、嫌な気分になったが、幸いこの日は雨には会わなかった。秋の混みようが嘘のように空いた道を20km走り9時40分頃大台ヶ原駐車場に着いた。それでもスペースの8割近くが車で埋まっていた。

  ここからは大台ヶ原を反時計回りに周る。すぐにコメツガや新緑のミズナラそして林床が笹の森となる。大台ヶ原らしく美しい森だ。やがて階段の坂道を下るとシオカラ谷の吊橋に出た。ここからしばらく、大蛇嵓手前の分岐まではシロヤシオ、別名ゴヨウツツジの大きな樹が多く、白い花のトンネルの中を行くことになる。 シャクナゲの群生地も抜けたが、花はひとつもなく、半月ほど前が適期と思えた。

 分岐はシロヤシオを堪能できる休憩地なっている。先ずは大蛇嵓へ往復する。この下りの路もシロヤシオが多い。また赤色のアカヤシオも何株か咲いている。 シロヤシオは丸い葉五枚の開いた形の輪生に対し、、アカヤシオは葉が細長く尖り、半開き五枚の互輪生となっている。花も赤く、少し大きい。 アカヤシオは福島県から兵庫県まで分布し、赤城ツツジとも呼ばれているそうだが、私はその時期赤城山へ行ったことがなく記憶がない。赤城山と言えば有名なのは新坂平のレンゲツツジで6月中下旬が時期で何回か見ている。もちろんアカヤシオとは全く別物で大きな赤橙色の花を10輪以上房状に着ける。アカヤシオは四国、九州の山のアケボノツツジの仲間とされているが、花の印象は大いに異なる。アケボノツツジは色がピンクでずっと大きくヒラヒラとした造花の感じで、花期は5月初めの2週間と早く、その時は葉はなく木全体がピンクに染まる。
 ついでながら5月初めに咲くムラサキヤシオと言う美赤桃色のツツジがある。広く分布しているが葉は3から5枚が輪生している。

 大蛇嵓は凸先まで行く人と戻る人とが交差して混んでいた。岩の左右両面が傾き、前方にも傾いていて見るからに危ない。スチールの鎖が取り巻いているが、滑れば開いた鎖の隙間から東の川まで数百米落ちておかしくない。肝試しにはなる。 谷ひとつ越えた垂直の岩壁では、3名のクライマーが取り付いていた。

 分岐に帰り、ここで昼食とする。
 この後牛石ヶ原、尾鷲辻そして正木ヶ原と白骨林と笹原の広がる高原を気持ちよくたどる。正木ヶ原から正木嶺へは少し下ってから木製の幾曲りもある浮き階段を登る。さらにわずかに登ると日出ヶ岳山頂に着く。山頂の展望台に上がり、四方を見渡すが、西の大峰山方面はいずれも山頂が雲に覆われていた。
 東南には熊野灘が見えるはずだつたがわずかに尾鷲湾が見えただけだった。

   
シオカラ谷へ向かう    大蛇嵓  
 
アカヤシオ(ツツジ科)    シロヤシオ(ツツジ科) 
     
牛石ヶ原    みごとに開花したシロヤシオ 
     
正木ヶ原   大台ヶ原最高峰、日出ヶ岳(1695.1m) 

  この山頂から大杉谷へ下る。その入口には「この先、大杉谷 大台ヶ原はもどれ!」と大きく書いてある。「!」マークがおもしろい、が重要なことでもある。
  以後闊葉樹、針葉め混交樹林、シャクナゲの群生地の中を緩やかなアップダウンを繰り返して道標もあるシャクナゲ平を通過する。路はしっかりしていて日出ヶ岳と堂倉小屋(避難小屋)の距離を記した道標が適当な間隔で立てられている。行きかう登山者は1,2組に過ぎなかった。
  この路、シャクナゲは確かに多いが、今春咲いた後はそれほど多くない。ピンクの花房を見たのはわずかにひとつだった。

 次の下りがシャクナゲ坂だが意外に遠く感じられた。 次に堂倉小屋と粟谷小屋の分岐点から距離も500mと短い左の粟谷直行ルートを取った。まだ未整備な感じで堂倉小屋への路の方がずっと歩きやすい事が帰路そちらを歩いて分かった。

 15時40分、今夜の宿、粟谷小屋に到着した。同宿はこの小屋の愛好会、「探足会」のメンバー、15、6人で半年に一度の集まりだった。
 早速風呂を済まし、夕食をいただく。雨が降り始め、やがて本格的な雨となる。ゆっくりと食後を楽しんだ後にコーヒーやゼンザイなどをごちそうになった。
 となりの長テーブルの探足会からはビールやウイスキーをごちそうになる。会の歌集の合唱が始まり、私の好きな古い山の歌「アルプスの恋唄」を一緒に歌わせてもらう。山で歌うことは「昔は当たり前だったのに今は----」と言うメンバーに相づちを打つ。 

   
日出ヶ岳山頂東の大杉谷入口    粟谷小屋 

6月5日(日) 雨後晴れ
  昨夜からの雨は弱まったものの依然として降り続けている。
 雨は覚悟の上。大杉谷へ行くつもりでここまできたものの、今日どこまで行けるか、歩いてみて判断するしかない。午後には雨も止むことを期待した。
 とにかく大杉谷の入口の堂倉滝まで行くこととする。林道を戻り、案内板などがある歩道入口から標高差約400mの急勾配を下る。木々の間から東側の尾根筋と新緑の山肌がのぞいていた。くの字型の路を下り切ると堂倉滝を正面に見る堂倉滝吊橋に出た。落差18mの滝は大杉谷の中でも堂々とした滝だ。滝つぼも大杉谷の滝の中では最大ではないだろうか。

 すぐに大杉谷本流を堂倉吊橋で渡り、左岸に移る。白い子滝や青い淵を見下ろしながら行くと、与八郎滝の名板に着いた。対岸の落差80mと言う細いひものような滝だった。このあたりまで桃の木小屋から登ってきた一組20~30人ツアーグループ3組程に会った。

 次の吊橋が隠れ滝吊橋で橋のたもと、右側に落差15mの隠れ滝が落ちている。名の通り橋に隠れたような滝だ。ここからは右岸となるがすぐに光滝となる。高巻きのヤブの間に40度程の斜度で流れ下る真っ白な太い流れが見えた。
 光滝が全容を見せるのは滝の下流のヘツリ路で、上半分が約70度の急傾斜そして下半分が約40度の腰折れしている様がよく分かる。水量も豊かで見事だ。
崖にはササユリやタツナミソウが咲いていた。

     
堂倉滝 落差18m    光滝 落差40m 
     
ササユリ(ユリ科)   タツナミソウ(シソ科) 

 ここまで来て当初の目的地、七ツ釜滝が近いことを認識して、そこまで行くこととする。しかしこの後には大崩壊地の通過、滑りやすく狭くて長いヘツリ場、そしてヒルが多いと昨夜脅されていた難関が控えている
  一旦河原に降りると大きなタニグルミの木が枝を広げていた。古くから大杉谷のシンボルツリーと言われてきたとか。 河原にからは右前に大崩壊地が見える。高さ100mの斜面が2009年9月の台風で崩れ落ちた。 遠目には大したことはないように見えたが、この崩壊地をアップダウンしながら抜けるのは時間がかかった。幾つもの巨岩を爆破して整備しかろうじて通れるようにしている。ドリル穴や白く火薬の残りが散在していた。

 次いで今回最高の緊張を要するヘツリ場に着く。流れからは7m程度の高さながら、足元の岩が流れ側に傾いているので幅20cm程度の足場と壁の鎖を頼りに20m程をヘツリで抜ける。

 七ツ釜滝吊橋を渡って滝の左岸の大岩壁を降ると滝展望台を兼ねる休憩所に着く。正面に三段の末広がり滝が見える。優美な姿から「日本の滝百選」に選ばれている。全体では7段落差120mあると言う。大峰の不動ノ滝にも似ている。

 ここで先ず足元をチェックして誰もヒルが付いていないことを確認した。事前に足元を固めることを注意してきたが、十分対策が取れていて安心した。
 この休憩所で雨に濡れずに落ち着いて昼食を済ます。冷たい雨に濡れた身には温かいコーヒーがなりよりのごちそうにだった。
 

   
大杉谷の河原から大崩壊地を見る
2009年9月の台風で高さ100mも崩壊した 
  大崩壊地を通過する 
 
光滝、七ツ釜滝中間のヘツリ岩場 鎖がなければかなり
危険な場所だ。写真は帰路時撮影 奥が下流七ツ釜滝
方面
  七つ釜滝 3段40m 全体では7段120mの滝
日本の滝百選に選ばれている 


 帰りの堂倉滝から日出ヶ岳までの標高差900mの登りが頭から離れないまま、帰路に着く。雨はほとんど止んでいる。ヘツリ場、大崩壊地も無事通過する。

 タツナミソウ、ヒメウツギ、あるいはガクウツギとか時折、名も知らない花を見つけて、何に似ているとか、写真を撮ったりして進む。 
 堂倉滝で大台ヶ原側から下ってきた40代の男性2名が挨拶もそこそこに滝つぼに降りて行った。この先200mくらい、路の石に血が点々と着いている。先ほどのメンバーのひとりが半袖だったそうで、彼がヒルに噛みつかれ気がついて滝つぼへ血を洗うため降りて行ったらしぃ。

 途中粟谷小屋へ寄る。またコーヒーのごちそうになり、元気に日出ヶ岳の登りに戻る。堂倉小屋からの路は歩きやすい路だった。

 シャクナゲ平あたりから空も晴れて森も明るくなった。日出ヶ岳の山頂手前からの階段路を歩き力を入れて登ると誰もいない静かな山頂に着いた360度の展望が広がっていた。 もう特に急ぐ必要もなくのんびり展望を楽しむ。熊野灘、大日岳〜釈迦岳、明星ヶ岳〜弥山、そして大普賢岳〜山上ヶ岳の大峰山、東には恵那山さらに左遠方にかすかに御嶽や乗鞍岳らしぃ影も見えた。

 3台くらいしか停まっていない駐車場へは18時過ぎに着いた。

 橿原のガストで遅い夕食を取り、梅田着21時45分、解散した。

 雨にも会ったものの予定のコースを全て、特に2日目は難路と下降登高合わせて19kmを皆バテもせず歩き通せたことに満足した山旅だった。 (文 清水)

   
昨夜の雨で散り敷いたシロヤシオ    シャクナゲ平、日出ヶ岳間のコルの林 
     
日出ヶ岳山頂から熊野灘を見下ろす。    日出ヶ岳山頂から左、弥山そして右に大普賢岳、
山上ヶ岳等の大峰の山々を見る 
     
日出ヶ岳山頂の鹿    日出ヶ岳山頂付近からの風景
遠方は左、釈迦岳そして右弥山など 

コースタイム

6月4日(土) 6月5日(日)
川西清和台 6:00 所要時間 5:40 粟谷小屋(1145m) 6:50 所要時間 11:15
阪神高速 歩行時間 4:30 大杉谷入口 7:00 歩行時間 9:35
梅田 6:40/7:00 休憩時間 1:10 堂倉滝(800m) 8:10/8:20 休憩時間 1:40
阪神高速 歩行距離 10.16km 隠滝 8:50 歩行距離 19.22km
阪南高速 累積登高 856m 光滝 9:15 累積登高 1422m
上市 ローソン 9:00/9:10 累積下降 1256m 大崩壊地 9:25~/9:40 累積下降 1023m
大台ヶ原駐車場(1574m) 9:40/10:00 ヘツリ岩壁(670m) 9:50
シオカラ谷(1420m) 10:35/10:40 吊橋 9:55
大蛇嵓分岐(1560m) 11:20/11:25 七ツ釜滝休憩所(550m) 10:20/11:05
大蛇嵓 11:35/11:45 吊橋 11:20
大蛇嵓分岐(1560m) 昼食 12:0/12:30 ヘツリ岩壁(670m) 11:35~11:40
正木ヶ原 13:00 大崩壊地 11:45~12:00
正木嶺 13:25 光滝 12:20
日出ヶ岳(1695.1m) 13:40/13:55 隠滝 12:40
シャクナゲ平(1525m) 14:30 堂倉滝(800m) 13:10
休憩(1440m) 14:45/14:50 粟谷小屋(1145m) 14:30/14:55
シャクナゲ坂(1300m) 15:20 堂倉避難小屋 15:00
分岐(1250m) 15:25 分岐(1250m) 15:15
粟谷小屋(1145m) 15:40 シャクナゲ坂(1300m) 15:25
シャクナゲ平(1525m) 16:20
日出ヶ岳(1695.1m) 17:05/17:25
分岐
大台ヶ原駐車場(1574m) 18:05/18:25
伯母峰峠 19:00
参加者: 清水、白柳、西村 2日間計 国道 169号線 19:10
所要時間 16:55 橿原市 ガスト 夕食 20:15/21:00
歩行時間 14:05 阪南高速
休憩時間 2:50 阪神高速
歩行距離 29:38km 大阪市梅田 21:50/21:55
累積登高 2279m 阪神高速
累積下降 2279m 川西清和台 22:30


 
大台ヶ原~大杉谷トラック地図 1 (1日目 大台ヶ原~粟谷小屋など)
 
大台ヶ原~大杉谷トラック地図 2  (2日目 粟谷小屋~大杉谷~日出ヶ岳など)

参加者    会員3名(清水、白柳、西村)


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