南アルプス 奥茶臼山山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

南アルプス 奥茶臼山(2474.4m)山行記録 個人山行

2017年93()5()
 以前から南アルプスの中央部の展望のよいところに興味があり、東の笊ヶ岳(2629.4m)に雨畑から登ったこともある。標高差、実に2,100m、途中でテント泊と言うハードな登山だっにもかかわらず、残念ながら頂上はガスで展望は得られなかった。茶臼岳、上河内岳、聖岳、赤石岳、荒川岳、悪沢岳、そして千枚岳への3000m前後の山々が扇状に見えるはずだったが、ついてない山行きだった。

 帰省や山行き時中央道を通る度、これらの山を気にかけているが2年前の春だったかに見た白銀に輝く、峰々は見事だった。仙丈ヶ岳から聖岳まで南アルプスの主稜の山々が全て見渡せた。飯田山本IC付近のことだ。このインター近くの伊那山地の山裾はきっと雄大な展望が得られるに違いない。快晴が約束された春や秋の朝訪れたいと思った。

 今回は笊ヶ岳とは反対の西側にある奥茶臼山に登って、これらの中央部の巨峰を眺めようと思いたった。地質学適にも中央構造線に接した山、そして近くの御池山は日本唯一の隕石クレーターであるという興味深い山域となっている。

 93() 晴れ
 一昨日まで雨だったがこの日からは晴れが続くとのことで、予定通り朝6時に出発する。登山のベースになるしらびそ高原には夕刻前に着けばいいので、中津川市の山城、苗木城跡を見て回った。近くの恵那市の奥にある岩村城は日本三大山城としても、また甥の信長によって磔にされた、女城主おつやの方の悲劇の城としてもよく知られていて、この6月に寄ったばかりだ。岩村城、苗木城共に南信、東美濃、奥三河に勢力を張った遠山氏によって築かれている。
 木曽川の岸から崖、大石と石垣が高く切り立って険しく、攻め登ることは無理な城だ。遠山藩1万石の城として岩村城同様、明治維新まで使われていた。 

   
中津川市 苗木城跡 天守台
自然の大石の上に築かれている 
  中津川市 苗木城跡 大矢倉跡 

 飯田ICで降り、上町に向かって走る。矢筈トンネルを抜ける。トンネル出口から少し行ったところで右下の道に入り、次いで左の橋を渡るのがしらびそ高原に登る林道への道だが、車のナビが反対側の道を指示して15分程度ロスした。新しい道に対応できていなかったのかも知れない。
 15km、1.5車線の林道を行く。日曜日なので、対向車に時々遭う。
 標高1,833mのしらびそ峠には車8台が停まっていた。東京から来たと言う夫婦が山から降りてきた。時間が無かったので尾高山まで往復したと言う。「路は大変よかったですよ。」と聞き、明日の心配が少し減った。
 ここから1kmで立派な宿泊施設「ハイランドしらびそ」に着く。早速キャンプ場の申し込みを済ます。16サイトあるが、先着が2組あったが私の後は誰も来なかった。気持いい芝生の上にテントを張った。
 夜中は結構冷えて、フライシートの内側には水滴が一面に着いていた。セーターも着こんでシュラフの中にもぐる状態だった。

 
しらびそ高原からの聖岳(中央) 

 94() 薄曇り後晴れ
  3時過ぎに起きて、東の星空のタイムラプス撮影をする。なじみの金星、オリオン座のベテルギウス、リゲル、三ツ星と星雲、こいぬ座のプロキオン、そしてひときわ明るいおおいぬ座のシリウスが上に移っていった。
 5時頃に東の空が赤くなってきた。残念なことに日の出の太陽は尾高山に隠されていた。簡単な朝食を済まし、露のついたテントを手早くたたんで車のトランクに入れて出発する。保安上通常7時まで閉まっているゲートをハイランドの管理人が開いてくれていた。

 しらびそ峠に車を置いて、登山口で登山届を投入して登り始める。カラマツの林の中の路は勾配はあるもののきれいに整備されていて歩きやすい。
 やがて前尾高山に着く。林はカラマツからシラビソとコメツガに代わる。林床もスギゴケやスゲの緑のビロードを敷きつめたようになる。これまで北八ヶ岳や大台ヶ原などで似た景色は見てきたが、これほど林床が美しい林は初めだ。この景色は岩本山の先まで続く。
 季節がらドクベニタケ、キヌメリガサ、ウスタケ等々のキノコも幾つも見られた。鋸岳の時採り忘れたヌメリイグチがあれば少しいただいて帰ろうと思っていたが、それは全く無かった。

 
しらびそ高原の南東の星空 左上こいぬ座プロキオン
、上部中央オリオン座そして下部中央おおいぬ座
シリウス、山は左に兎岳、聖岳 中央は上河内岳
  しらびそ峠の登山口 
 
尾高山周辺の苔に覆われた針葉樹の林床    ドクベニタケ 

 緩やかな登り下りの後尾高山に着く。奥茶臼山までのほぼ1/3行程を来た。この頂上も針葉樹林の中で展望はない。ここから小さな岩場を下り林の中を行く。左に浅い谷があるところで、左に直角に曲がる路があるが、ここは通行止めの木が渡してあったので真っ直ぐ進むと少しの登りで奥尾高山の山頂に出る。広く緩やかない林の中の山頂だ。

 ずっと同じような景色の中を歩いて岩本山に着く。ここから先は路も悪くなるとの報告もあり、路を間違えないように行く。ずっと先に奥茶臼山らしい針葉樹のふたつのピークが樹の間から見える。左が頂上らしい。針葉樹の密度が少し減り、傾斜も無くなってスゲの中の踏み跡が薄く分かりにくくなってきた。赤テープで確認しながら進む。
 左上に奥茶臼山山頂下の縞枯れ状態の林が覗く。
 多くの太い幹が白くむき出しになっている縞枯れ帯に入るとスゲが踏み跡を覆い、路が分かりにくい。坂を登りきって林の中を少し行くと山頂に着く。木の札と背の低い二等三角点があるだけのつつましい山頂だった。

 
奥茶臼山頂上ピーク下から見る頂上付近の縞枯れ林    奥茶臼山山頂 

 ここから北に踏み跡を進んで30m近く下ると、林が伐採されて北と東の展望が開ける。黄色のキオン(キク科)の群れか幾つか咲き誇っていた。
 東真正面には悪沢岳、荒川岳と赤石岳が大きく、聖岳も見ることができた。北東には仙丈ヶ岳、少し離れて北岳、間ノ岳そして西農鳥岳が並び、さらに塩見岳が鉄兜の山頂を見せている。雲が下がると仙丈ヶ岳の右にコブを付けた甲斐駒ケ岳がうっすらと姿を見せてくれた。
 期待していた大展望を楽しみながらの昼食は何にもまして贅沢なものだった。

 帰路は縞枯れ帯で案の定踏み跡を失い、左側20mを下ってしまい、GPSで往路に戻る。迷いやすい所だ。。

 下りとは言え、尾高山までは標高2,200mから2,100mのピークを数多く登り降りする。とにかくこの道のりは長い。ようやく着いた前尾高山からどんどん下ればしらびそ峠だ。。

奥茶臼山山頂の北側のコルからの展望 左から仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳、悪沢岳、荒川岳、赤石岳  
 
刈り開かれたコル キオンの花が咲いているコル    奥茶臼山ピーク下の林床 

  「ハイランドしらびそ」に戻り、管理人に下山を知らせ、今夕泊まる下栗の里の宿、「高原ロッジ下栗」を予約してもらう。

 ここから約10分で御池山隕石グレーターに着く。日本唯一の隕石クレーターで直径900mの半分が残っている。3万年前に直径45cmの隕石が落ちたと言う。隕石のかけらはどこでもそうだが見つかってない。隕石が落ちた証拠として、クレーター底の珪石に多大な衝撃によるラメラ(薄層状非晶質)が顕微鏡で見つかると言うミクロなものだ。 

 御池山から下栗の里への道はは急で狭い。NETではこの間は下りコースを推奨している。下栗の里は「天空の里」とか「日本のチロル」と呼ばれて人気のスポットになっている。里の手前から片道徒歩1kmにある下栗の里を斜め上から見るビューポイントに寄る。
 その日の「高原ロッジ」の客は3組、5名だった。

95() 晴れ
 高原ロッジでの朝食を済ませて、下栗の里で写真を撮りながら国道152号へ下る。里からは尖った聖岳が正面に見える。右には加々森山が頭を覗かせている。次に行きたい池口岳はそれに隠されて見えなかった。
 一旦152号を南に走り、遠山郷まで行ってみる。途中、昔行った易老渡への入口がある。新しいバイパスからは易老渡の方向とは逆の右側、西にあり、くるりとバイパスを潜って東に行くようになっている。

   
ビューポイントから見た下栗の里   下栗の里から見た聖岳(中央) 

 道の駅「遠山郷」には「かぐらの湯」が隣接し、聖岳、光岳登山者駐車場もあった。案内所の青年に聞くと、易老渡への道は途中にゲートが設置され、自家用車はそれより先には進入できなくなったそうで自家用車をここに駐車してタクシーで易老渡に向かうそうだ。
 たまたまこの時期、光岳へ登った岡村さんによるとそのタクシーも917日までらしく、注意が必要だ。

 以上でこの旅を終えて、中央道、名神高速道路を走って14時過ぎに帰宅した。ウィークデイのため山中ではひとりの登山者とも会わなかった。

 
 今回の奥茶臼山は以前の昭文社の「山と高原地図 塩見・赤石・聖岳」には地図も説明、コース紹介は無かった。しかし2017年度版は全面改訂されて、詳しく説明を加えた地図とコース紹介が入っていることがこの山行の後分かった。この地図によればしらびそ峠〜奥茶臼山山頂の歩行コースタイムは登り4:25、下り3:50となっている。私のタイムが4:103:40で、写真撮影やロスタイムもあったものの標準タイム以内におさまりホッとした。荷も軽いので問題ない行程だった。
 山々の展望を目的とするなら、4月末~5月上旬の頃が主稜の峰々は真っ白で、奥茶臼山までは無雪で、シラビソ高原まで車も入れるのでベストシーズンではないだろうか。 (文 清水)

 
コースタイム

2017.9.4南アルプス奥茶臼山(2474.4m) 全行程
3日(日) 車走行距離
ハイランドしらびそ高原前夜テント泊 6:00 歩行時間 8:05 川西清和台 6:00 0
しらびそ峠(1,833m) 6:05:/6:10 休憩時間 0:50 中国豊中IC 6:20 12
前尾高山(2,089m) 6:55 測定機器 スマホ 多賀SA 7:30/7:40 115
尾高山(2,212m) 7:40/7:45 ソフト Geographica 恵那SA 9:10/9:30 246
奥尾高山(2,266m) 8:25 測定点数 926 中津川IC 9:40 253
2,230mピーク 8:55/9:00 歩行距離 15.54km 苗木城跡 9:50/11:10 265
岩本山(2,269m) 9:25 累積登高 1361m 中津川IC 11:40 280
奥茶臼山山頂(2,474.4m) 10:30/10:35 累積下降 1361m 神坂PA 11:50/12:30 290
展望ポイント(2420m) 10:40/11:05 飯田IC 12:50 317
奥茶臼山山頂(2,474.4m) 11:15 程野 14:00/14:10 356
岩本山(2,269m) 12:15/12:20 しらびそ峠  14:40/14:55 371
奥尾高山(2,266m) 13:15 ハイランドしらびそ  15:00 371
尾高山(2,212m) 13:55   キャンプ場泊
前尾高山(2,089m) 14:35/14:40
しらびそ峠(1,833m) 15:05/15:10 4日(月)
ハイランドしらびそ高原 15:15 ハイランドしらびそ 6:00 371
しらびそ峠 6:05:/6:10 372
奥茶臼山まで往復
しらびそ峠 15:05/15:10 372
ハイランドしらびそ 15:15/15:30 373
御池山隕石クレーター 15:40/15:45 377
下栗 385
  高原ロッジ下栗泊 16:10
5日(火)
下栗 7:45 385
上町 8:30 394
遠山郷和田 道の駅遠山郷 8:50/9:00 405
程野 9:30 421
飯田IC 10:30 454
多賀SA 12:30/12:50:00 656
中国豊中IC 14:00 759
川西清和台 14:20 771


 
奥茶臼山トラック地図 

参加者 南井、清水、西村 計3名

山行記録トップへ

「山があるクラブ・Ⅱ」 HOME