キタダケソウの北岳の山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・U」登山クラブ

山行記録

キタダケソウの北岳

2012年7月5日(木)−7日(土)

7月5日(木) 晴れ後曇り
 今回の山行は北岳固有種のキタダケソウに会うことだ。梅雨のこの季節にしか咲かないので、雨は想定の内だ。
 私達3人は戸台からバスで広河原に行き、芦安側から一足先に着いていた菅さんと合流して出発する。
 野呂川の吊り橋を渡り、樹林帯を進むとやがて急坂になる。暫くは皆について歩くが、早いペースにこのままだと途中で歩けなくなると思い少しペースを落としてもらう。木々の間から鳳凰山の尾根を垣間見ながら、第一ベンチ、第二ベンチと順調に高度を上げる。ベンチ横の案内板に(急登 あと20分 がんばれ)の文字を見つけホットすると共に元気が出てくる。この急坂を登りきると緩やかな巻き道になり、やがて白根御池小屋に着く。新しく清潔で山小屋とは思えない程、快適だ。

   
   
御池からの八本歯のコル(中央)と北岳(右)                    御池小屋
   

7月6日(金) 曇り後雨
 白根御池小屋から白根お池を後ろに残雪のある草すべりの急坂を登る。さらにダケカンバン帯の斜面を葛篭折りにどんどん高度を上げるとニリンソウの咲くお花畑にでる。まだ続く急坂を残雪を踏み登ると今度は一面のシナノキンバイノのお花畑になり、地蔵岳のオベリスク、甲斐駒ケ岳、富士山の眺望が楽しめる小太郎尾根に出る。

ハイマツとキバナシャクナゲのお花畑、次はオヤマノエンドウ、イワベンケイ、チョウノスケ、イワウメ等まるでスライドを見るように斜面一面に次から次とお花畑が現れる。多くの花に感嘆しながら歩いていると何時の間にか肩の小屋に着く。

   
    
草すべりのシナノキンバイ                  小太郎分岐付近からの甲斐駒ヶ岳と小太郎尾根


   
           北岳北稜線                            北岳北稜線に群生するイワウメ


 小屋で宿泊の手続きと小休止をし、いよいよ山頂を経てキタダケソウの咲くトラバース道に向かう。風が出てきて、雨もポツリポツリと降りだすがキタダケソウに会える期待で気にならない。
 山頂で記念写真を撮り、やせた急な岩稜を強くなってきた南西の風に足元を注意しながら下る。やがて八本歯コルの分岐に着くが、立ってられないほどの風だ。ここから左の八本歯へのルートを取ると風も弱くなる。さらに下ると北岳山荘へのトラバース道に出る。北岳山荘へは途中に雪渓があり、滑落した人がいたということで、途中までしか行けないとのことだった。
 あたりはハクサンイチゲが一面に咲くお花畑で、同色のキタダケソウは初めなかなか見つからなかった。
 咲いている!キタダケソウだ!斜面一面のハクサンイチゲの中に愛おしくなるほど控え目に咲いている。ハクサンイチゲより茎は低く花びらも小さいが、葉は裂が深く多くのギャザーを寄せた様だ。


      
    北岳北稜線のキバナシャクナゲ              キタダケソウの生えるトラバース道はハクサンイチゲ
                                       のお花畑になっている


   
       キタダケソウ(キンポウゲ科)                   キタダケソウ(キンポウゲ科)   

 強くなる風雨の中でカメラを構えるが花が揺れてなかなかシャッターが押せない。ますます強くなる風雨に名残惜しいがキタダケソウと別れて強風に歩みを止められながら、また山頂を越えて小屋に戻る。この午後、我々が帰ってから、山頂へのルートは危険なため通行禁止となった。

多くの登山者の中でも特に明るく元気な福島からのお二人さんの隣に寝る事になる。彼女達とは前日の白根御池小屋でも同室だった。「紅葉の安達太良山、磐梯山、に行きたいけど、人が多く山小屋の予約もなかなか取れないと聞いている」と問うと「震災後は人が少なく、放射能の心配がない場所なのに福島というだけで人が来ない」と返事が返ってきた。少し、暗い表情に見えた。

夜中、暴風に小屋は地震かと思うほど揺れて悲鳴をあげていた。

7月7日(土) 霧雨後曇り
 一時回復の天気予報に出発を遅らせ往路を下る。第二ベンチまで来ると雨も止み雨具を脱ぐ。広河原近くになると道路の安全確認が済むまで夜叉神峠で待機させられていた幾つものパーティが登ってきた。
 広河原では山梨側からのバスやタクシーが絶え間なく来ているのに、北沢峠、戸台へのバスはうそみたいに少ない。首都圏の登山者は関西とはケタが違う。若い女性も鮮やかな山ガールスタイル垢抜けている。菅さんとはここで別れる。それでも10:30に臨時バスが来て北沢峠そして戸台へ戻り、今回の山行を終えた。バスで下山途中はきれいな晴れ間も出て、双児山、鋸岳等も見え、甲斐駒もうっすら見えたが、里に下りるとまた雨寸前となり、不安定な天気だった。

 清水さん、行きは夜明け前から、帰りは夜遅く迄、長時間の運転を有難うございました。 (村上)

キタダケソウについて
 北岳の山頂付近、石灰岩が混じる斜面に生育しているキンポウゲ科キタダケソウ属の固有種です。絶滅危惧種にも指定されています。6月下旬〜7月上旬に白い10枚程度の花弁をつけますが8月には葉も消えてしまいます。
 北岳の石灰岩は1億3000年前に南の海に堆積したものが、プレートによって日本海溝近くに移動して、他の珪石と混じり、隆起したものです。この辺についてはアドバイザーのページの"日本列島の誕生"を参照してください。北岳、そこの石灰岩そしてキタダケソウにはそうした地球の変動や氷河期がら生き残りというロマンが秘められています。
キタダケソウと同属に日高山脈、アポイ岳(蛇紋岩、かんらん岩の山)に生育する絶滅寸前のヒダカソウがあります。1999年5月に家内と共に訪れましたが本当に数株、数輪しか見ることができませんでした。2006年からはその生息域、幌満花畑も立入り禁止となりました。今後自然状態の植生を見ることもできそうにありません。同属にはもう1種キリギシソウというものがあることが知られています。これは北海道芦別の石灰岩の山、崕山(きりぎしやま)に生育する固有種ですが、盗掘等により絶滅寸前ということで、入山も禁止されています。 (清水)

参加者 4名(山があるクラブ・U会員3名 清水、南井、村上、他1名 菅) 

コースタイム

7月5日(木)     6日(金)   7日(土)     
 川西  0km  03:00     御池小屋  05:25    肩ノ小屋    6:00
 大阪  13  03:40/04:00    肩ノ小屋  08:10/9:20    御池小屋    7:10/7:30
 豊中IC  46  04:20    北岳山頂  09:50/9:55    広河原    9:25/10:30
 菩提寺PA  119  05:15/05:40    八本歯のコルへの分岐  10:15    北沢峠    10:55/13:00
 多賀SA  154  06:05/06:20    北岳山荘への巻き道分岐  10:25    仙流荘  389  13:40/14:00
 恵那SA  277  07:35/07:40    巻き道(キタダケソウ)  10:35/10:50    高遠温泉  408  14:30/15:30
 伊那IC  365  08:45    八本歯のコルへの分岐  10:55    伊那IC  415  15:40
 仙流荘  389  09:05/10:05    北岳山頂  11:15    多賀SA  626  18:30/19:10
 北沢峠    11:00/11:15    肩ノ小屋  12:00    吹田IC  724  20:15
 広河原    11:40/11:45      千里中央  731  20:30
 御池小屋    14:35      川西  748  21:00

歩行距離 7月5日広河原〜御池3.2km、
       7月6日御池〜肩の小屋2.3km、肩の小屋〜山頂0.8km、山頂〜巻き道0.7km、巻き道〜山頂0.7km、山頂〜肩の小屋0.8km、計5.3km
       7月7日肩の小屋〜御池3.3km、御池〜広河原3.2km計6.5km
累積標高 2.100m


  
                           北岳トラック地図
この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである。
         
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