北アルプス 常念山脈 蝶ヶ岳~常念岳山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

北アルプス 常念山脈 蝶ヶ岳(2,677m)~常念岳(2,857m)山行記録

2017年8月4日(日)〜6日(日)

 6月頃から徳沢周辺に行きたいと思っていたが、今回、穂高岳の展望のいい蝶ヶ岳から大天井岳を経て燕岳への縦走を計画した。

 蝶ヶ岳は昭和期の偉大な山岳写真家で、高山蝶の研究家でもあった田淵行男の愛した仕事場でもあった。今回の登山口でもある安曇野市に田淵行男記念館がある。いくつもの写真集は当時でも高価なものだったが、今も大事にしている。

 蝶ヶ岳、常念岳とも春の雪形で知られ、山の名にもなった白い蝶(田淵によるとミヤマモンキチョウに似ていると)や黒い常念坊が見られる。
http://jack0904.blog.fc2.com/blog-entry-644.html
 古来言われている山頂近く、左下に現れる小さな白い蝶の他に私が個人的に蝶形と見ているのは山頂下に大きく羽を広げた大きなアゲハチョウ模様だ。


8月4日(金) 晴れ

 ずっと天気予報で3日目は雨との天気予報が一昨日になって全日程晴れ間のある好天気に変わって、早朝早く気分よく出発する。
 
 予定の時間に全員が集合地の豊科駅に集合した。南井さんは前日から車で信州に入っていた。早速予約していたタクシーで登山口の三股林道ゲートへ向かう。烏川渓谷の林の中の1.5車線の道が続く。三股には50台近くの車止まれる広い駐車場かあったが、ほぼ満車で、土日は道傍に車が並ぶらしい。しっかりしたトイレも建っている。

 ここから蝶ヶ岳ヒュッテまでの距離6.4kmあるが、途中に距離表示されていて、行程の目安となる。1km先の登山相談所で係の人に登山届を提出する。

  相談所のすぐ先に前常念岳経由常念岳へ登る路が分かれている。その標識が右にある。蝶ヶ岳へはまっすぐ進む。本沢を渡ると急な坂路となりすくに力水に着く。わずかな水が落ちている。これから先水場も不確かなので1Lのボトルに水を満たして、先に進む。1kmほど行ったところで路は左へ曲がり、急勾配の支稜を200m登る。

   
三股林道ゲートの駐車場    登山相談所 
 
いきなり急な階段    ゴジラみたいな木 

 まめうち平(1910m)は直径15mほどの広場で、この先は山腹を斜行するが距離もあり、また気温も上がって汗が出てくる。 割と珍しいオサバグサ(ケシ科)の葉が群生していろ。葉はシダのシシガシラに似ているが色は濃い。花の散った花茎も残っている。真っ白いギンリョウソウ(イチヤクソウ科)も群れていたりした。
 やがて前方に沢が現れる。少し下って石くれの沢を渡る。最終水場らしいが、水音は上流でするものの、渡渉点では伏流していて水を汲むことはできない。

 山頂までまだ標高差500mある。ここからは斜行とジグザグの路がすっと続く。地図では傾斜はきつい斜面たが、斜行か多く標高をなかなかかせげない。身体中汗だくになる。針葉樹、ダケカンバ林と樹相は変わっても、稜線特有の灌木帯が稜線間近になるまで現れなかった。
 もう直ぐと思いながら登ると急にハイマツの広がるなだらかな稜線に飛び出した。目の前にテントが10張りばかり、その後ろに緩やかな山頂があった。薄いガスに覆われ展望のない山頂だった。

 蝶ヶ岳ヒュッテ着17時40分。特に追い抜かれることもなくまずまず順調に登ったが、ヒュッテの客では最終近い客となった。小屋はほぼ定員の客が入っていたが、ゆったりとスペースを取ることができた。

夜はガスも去り、晴れ間が覗いていたが、星空を撮れるほどでなかった。

 
蝶ヶ岳ヒュッテ 

8月5日(土) 快晴

3時頃目覚め、外をうかがうと濃いガスに包まれていた。これではご来光も、朝の展望も駄目だなと半ば失望して寝床に戻った。

4時半頃ガラス窓の向こうに暗いながら晴れている空を見つけ、早速カメラと三脚を持って外に出る。ヒュッテ北側の稜線にある名盤周辺の「瞑想の丘」にはすでに20人ほどのひとがご来光を待って立ち並んでいた。
 槍ヶ岳も撮るため、北のはずれでカメラを据えて日の出を待つ。西側には穂高岳が大きい。大迫力だ。大キレツトの右には槍ヶ岳がその尖峰を見せていいる。さらに右に目を向けると、手前から続く稜線の向こうに常念岳がそびえていた。穂高岳から南に目を向けると乗鞍岳が雲の上に浮かんでいてその左奥に小さく御嶽が見える。明神岳と乗鞍岳の間にあるはずの焼岳ははじめ雲の下だったがやがて赤い姿を見せてきた。

東の空は赤く輝いてやがて陽が姿を現わす。5時3分日の出だ。その南には富士山そして南アルプスの甲斐駒ヶ岳や北岳かあった。群青だった穂高岳が赤く、そして緑となり、より間近に壁を連ねていた。まさに至福の時間だった。

ヒュッテの朝食を摂り、6時40分発。ゆっくりした出発だ。

 
蝶ヶ岳山頂からの御岳(左)と乗鞍岳    夜明け前、左から明神岳、前穂高岳、億歩だか岳、
涸沢岳、北穂高岳、大キレット、そして南岳 
   
ご来光     
   
左から明神岳、前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、
北穂高岳 
  左から中岳、大喰岳、槍ヶ岳 
   
蝶槍から常念岳さらに大天井岳への稜線     

南の御岳から穂高岳そして槍ヶ岳へいたる大展望 

手前から見ると小さな槍の穂先のように見える蝶槍までは起伏も緩い尾根路。穂高岳、槍ヶ岳、そして常念岳を眺めながらの歩きだ。ここから一気に100m下り、2460mのコルに向かう。丈の低い広葉樹林の中の路だ。コルから灌木帯を経てマルバダケブキやニッコウキスゲが咲くお花畑を通過する。

これから常念岳直下の最低鞍部まで4つのピークが連なる。稼いだ高度を何度も落としてしまい、また登り返すと言う気分的にも嫌な路だ。路の岩が積み重なりを登るのに踏ん張りが弱く、荷が左右に振れバランスが悪い。気温も上がってきた。
 標高2470mの最低鞍部着9時55分。ここから仰ぎ見る常念岳の山頂まで標高差387mが実に大きく感じた。

 
常念岳手前までこうした岩峰のアップダウンが続く    常念岳の約400mの登り 
     
常念岳山頂で     

常念岳へは早めの昼食も入れ、5ピッチで登る。3ビッチで登れる高さたが、今日は調子が違う。これまで20kgなら問題なく、足の踏ん張りも効き、荷の振れもなかったが、今年初めからの糖質制限による体重低下が原因らしい。少し懸念していたところだ。

昼食後の登りは、荷物を少し持ちましょうかと言ってくれる瀧井さんに大きい方のカメラ、1.5kgを持って、山頂に着いた。雲が下から湧いてきて展望はなかった。

小屋のある常念乗越までの下りは1時間の長いガレの路だった。

常念小屋着、14時10分。

予定の大天井まではさらに3時間10分の行程だが、常念岳の登りのペースでは4時間近くかかるとも考えられたので、残念ながらお大天井や燕岳はあきらめることとした。初めてこの山脈を訪ねる瀧井さんには気の毒だったが、次の機会を期してもらう。

それはともかく、小屋に着いてすぐに飲んだビールはなんともおいしかった。気力とも回復する。

小屋は超満員で一畳2名で詰め込まれた。神戸と岐阜のパーティが同室だった。

4時頃空が暗くなりにわか雨が降った。

 

8月6日(日) 晴れ

薄曇りの外に出て見ると、すでに多くの人々が出発の準備をしている。いくつものツアー客が準備体操やストレッチをしている。泊まり客の半数はこうしたツアー客と言うのが当世の登山らしい。早い出発を期して小屋食でなく、外で簡単な食事をしている人も多い。

西に槍ヶ岳が見えるが、穂高岳は常念岳にさえぎられて見えない。槍ヶ岳は本当に槍先を突き立てている。平らな稜線に槍先を立てて置いた形だ。左側は75度、右側は60度と鋭い岩塔だ。普段我々がなじみの姿は南や北側から見る様な富士山の勾配を2倍にした様なすそからせり上がるピラミッドなので違和感のある形だ。また小槍は槍本体に隠れている。

日の出を見ようと東に出ると下は雲海が広がっている。上空の雲も少し多かったが、きれいな日の出だった。やがて常念岳そして今いるコルが赤く染まり、ガレの石くれが輝いて金色の世界に包み込まれている感じだった。

 
夜明け前の槍ヶ岳と常念小屋   朝日で赤く焼けた常念岳と乗越 
   
赤く照らされた雲海     

 食事も出発準備も済んで、しばらく時間をつぶしていたが、することないので瀧井さんと清水は先に出発する。蝶の撮影をしたい南井さんは蝶が活動するまでお遅れて出発して二人を追うこととなった。

常念乗越からの下り始めは表銀座のブナタテ尾根の下り始めと似てかなり急だ。急坂を下りきったところが常念沢で4本の丸太を敷いた橋を渡る。登りの場合、最終水場になる。 
 ここからしばらく沢の左岸につけられた路を行くが、路の両側の斜面にはピンクのシモツケソウ、白のヤマブキショウマ、センジユガンピ、ヤマハハコ黄色のマルバダケブキ、ミヤマアキノキリンソウ、コキンレイカ、オオバキスミレ、紫のソバナそしてギボウシなどが咲きほこるお花畑が続く。種類が多いのには驚いた。カメラであれこれ撮影する。

蝶もかなり飛びまわるようになり、ヤママダラヒカゲも見られた。石に数尾(数頭と言うのが正しいらしいが)のクロヒカゲが止まって休んでいたりする笠原沢出合いで少し休憩する。

ゆるやかな路をどんどん下り、冷たい水の流れる大滝(王滝)ベンチで残った食料で早い昼食とした。ガスを使ってスープやコーヒーを作り、南井さんを待つ。ほどなく彼もやってくる。モンキチョウなどのいい写真が撮れたようだ。
 下り路は計5.7km、残すところ1kmあまり、最後に山ノ神の鳥居と祠に頭を下げるとすぐに予約したタクシーが待つ、登山口だった。

   
一ノ沢への下山路に続くお花畑 シモツケソウ、
マルバダケブキなどが見える 花の種類も多い 
   クロヒカゲ(タテハチョウ科)
   
ヤママダラヒカゲ(タテハチョウ科)    ミヤマモンキチョウ(シロチョウ科) 

ここから林道を下り、南井さんの車を置いてある穂高駅傍の駐車場に向かう。駐車場からは初日にも通った三股への道に入り、温泉、「ほりでいゆ」で3日間の汗を流す。
 ここで土産に買った5kg以上のよくできたスイカをザックに詰めると、2日日の荷と同じ重さになったが、平地での乗換え時だけのこと気にならない。期待通り、大変美味しいスイカだった。  帰路は安曇野ICから米原ICまで渋滞もなく帰る。南井さんには長時間の運転ご苦労様でした。

 以前、5月の連休、残雪期だったが大天井から蝶ヶ岳まで今回と同様の荷を背負って、実6時間10分の歩きで踏破したのが、今回は常念岳の登りでシンドイ思いをした。
 今思えば残雪期は路が締まった雪路で、キツクステップでまっすぐ楽に登れること、下りは岩も埋まっていてこれまた足場を左右選ぶことなくまっすぐに半分滑らせながら下れたからだと思う。ただ横通岳~常念乗越間の針葉樹林では下枝をを埋めた雪に何回も7、80cmも落ち込んで抜け出すのに苦労したのは忘れられない。気温が快適なこと、携行する水が少しでいいことなど好条件が重なったためだ。。もちろんそれから31年、残念ながら今回年齢差と体重を3kg落としていたことは大きなマイナス要因と思えた。 (文 清水)


コースタイム

8月4日(金) 8月5日(土) 8月6日(日)
豊科駅 タクシー 10:40/10:45 蝶ヶ岳ヒュッテ(2,660m) 6:40 常念乗越、 6:40
三股 林道ゲート(1,280m) 11:15/11:25 蝶槍(2,660m) 7:30/7:35 常念小屋2,466m()
三股 登山口、相談所(1,350m) 11:40 2,462mコル 8:05/8:10 沢(2,190m) 7:20/7:30
力水(1,480m) 12:05/12:10 2,520m(2592mピークの南) 8:25/8:30 笠原沢出合1,890m() 8:25/8:35
1,700m 12:55/13:00 2,510m(2592mピークの北) 9:00/9:05 大滝(1,615m) 9:25/10:05
まめうち平(1,910m) 13:45 2,480m(2512mピークの南) 9:20/9:30 一ノ沢登山口(1,323m) 10:50
1,930m 13:50/13:55 2,470m(最低鞍部2,460m) 9:55/10:00 タクシー
2,110m 14:45/14:50 2,550m 10:15/10:20 穂高駅 11:20/11:25
2,270m 15:40/15:45 2,590m 10:35/1040 温泉ほりでいゆ 11:40/12:50
2,420m 16:20/16:25 2,610m(昼食) 10:45/11:15 安曇野IC 13:05
2,570m 17:00/17:05 2,710m 11:55/12:00 米原IC 17:10
蝶ヶ岳ヒュッテ(2,660m) 17:40 常念岳(2,857m) 12:40/13:05 米原駅 17:20
常念乗越、 14:10
常念小屋(2,466m)
歩行時間 5:40 歩行時間 5:45 歩行時間 5:50
休憩時間 0:35 休憩時間 1:45 休憩時間 1:40
測定機器 スマホ 測定機器 スマホ 測定機器 スマホ
ソフト Geographica ソフト Geographica ソフト Geographica
測定点数 485 測定点数 525 測定点数 369
歩行距離 6.48km 歩行距離 5.95km 歩行距離 5.77km
累積登高 1,455m 累積登高 708m 累積登高 25m
累積下降 98.1m 累積下降 912m 累積下降 1,162m

常念山脈縦走トラック地図 

参加者 清水、瀧井、南井 計3名

山行記録トップへ

「山があるクラブ・Ⅱ」 HOME