北アルプス 室堂~五色ヶ原~薬師岳~折立山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

室堂~五色ヶ原~薬師岳~折立縦走 
2019年7月26日(金)~7月29日(月)

7月26日(金) 晴れ 室堂~浄土山~獅子岳~五色ヶ原

 早朝ホテルのフロント前に集合して富山地鉄富山駅へ向かう。

 5時25分の始発の急行電車に乗る。列車からは逆光ながら池ノ平山、劔岳そして大窓、小窓、三ノ窓が見えて気分も昂まる。立山駅ではすでに多くの登山者がケーブルカーの切符売場に並んでいた。待たされること1時間以上、美女平でさらにバスに乗り換える。
 広い弥陀ヶ原やきれいな姿の薬師岳を眺めながら室堂ターミナルに着く。

  軽い朝食を取ってから外に出て、いつものように玉殿の水をペットボトルに入れて出発する。
 路の周りの草原にははチングルマやミヤマキンバイなど咲いていて早速花の写真撮影が始まる。室堂山荘手前の分岐で室堂山、浄土山への路に入る。室堂山からの斜面はよく山スキーで滑り降りたところだが、今も雪渓が幾筋か残ってコントラストをつけている。

 室堂山手前で左折して浄土山への路へ入る。浄土山の南側の急斜面のジグザグ路を山頂目がけて登る。軽装のハイカーの団体が我々を追い越して行く。室堂―浄土山―(龍王岳)―一ノ越―室堂の周回が手軽な日帰りコースとして人気らしい。

 浄土山の頂上は広い。龍王岳に近い一ノ越への分岐付近で早い昼食を取る。目の前に鋭い岩峰の龍王岳が屹立し、ハイカーが登り降りしている。手前のコルから右へこれから向かう五色が原への縦走路が下っている。

室堂山付近から室堂を見下ろす     
 
浄土山から立山雄山と一ノ越を見る    鬼岳手前から龍王岳を見る 

 ハイマツの中の大石が重なりあった急坂は結構長い。下ると鬼岳とのコルでここから振り返ってみる龍王岳はまさに、立山曼荼羅の針の山そのものだ。

 ここから鬼岳東面の雪渓へ降る最初の雪渓は狭いが、雪が硬そうなので、軽アイゼンを付けて渡る。2本目、3本目の雪渓もトラバースして獅子岳へ登り返す。ここまで雪渓周辺にはハクサンイチゲ、シナノキンバイ、イワイチヨウそしてコバイケイソウなどの湿性湿原に多い花が咲いていた。決して広大とか高密度というわけではないが、きれいにまとまっている。

 突然、「クロユリ!」という喚声が後ろで上がる。1m四方にクロユリが群れている。花色から目立つものでなく、ポーッと歩いていると見逃してしまう。このすぐ後も2個所咲いていた。獅子岳、そしてザラ峠まではハクサンボウフウ、ハクサンフウロ、ミヤマコウゾリナ、ハクサンチドリ、ヒメクワガタ、チシマギキョウ、マルバダケブキ等、種々の高山植物を見ることができた。

     
鬼岳東面の雪渓群と獅子岳    雪渓を渡る 
   
クロユリ(ユリ科)    ハクサンイチゲ(キンポウゲ科)
     
消えた雪渓跡のお花畑     

 獅子岳からは北の劔岳、龍王岳、鬼岳そして立山雄山の連峰が迫るのが見え、南には五色ヶ原、越中沢岳から薬師岳への連なりとさらに遠く赤牛岳、雲ノ平、笠ヶ岳、黒部五郎岳の北アルプス中央域の山々を望むことができた。

 ザラ峠への降りはジグザグを切ってはいるものの岩とガレの長い下りで、滑落しないように注意深く降る。後半はハイマツの中のガレ路で気も休まる。

 ザラ峠で一息いれてから五色が原へ向かう。傾斜は緩く、すぐに整備された木道となる。キャンプ場と五色ヶ原ヒュッテへ左折する分岐を過ぎて真っ直ぐ進んで今日の泊まりの宿、五色ヶ原山荘に着いた。17時5分着は予定よりも大分遅い時間だった。今回、皆、朝昼食は自前だったので、荷が少し重かったかも知れない。しかし2日目から先、荷も軽くなってゆくためか、徐々にピッチも本来のものとなったと思う。

長い一日だったが、好天候のもと、優れた山岳展望と花々を楽しめた一日であった。

夕食後、外に出てみると南の雲も晴れて赤牛岳の左に槍ヶ岳がその穂先をのぞかせていた。

   
 乾いた岩場やガレ場が好きなチシマギキョウ(キキョウ科)   獅子岳から五色ヶ原を見る 
     
ザラ峠から獅子岳と縦走路を見る 上部はガレの路となっている    五色ヶ原から槍ヶ岳の遠望  

7月27日(土) 快晴後曇り 五色ヶ原~越中沢岳~スゴ乗越小屋 

 申し分のない朝、湯を沸かし、各自が好みの朝食とする。
 準備も済んで5時50分出発する。五色ヶ原を横切り、鳶山山頂を目指す。最初は木道でその後、普通の登山道となる。後立山連峰の上にある朝日が原の幾筋もの雪渓を照らしてまぶしい。
 空気も澄んで昨日よりまわりの山々がすっきり見える。写真日和だ。

 鳶山の山頂から周囲を見回す。昨日も見た北の立山連峰、そして南の数多くの山々、槍ヶ岳、赤牛岳、笠ヶ岳そして薬師岳等々指呼できる。

 ここから手前に見える越中沢岳を越え、スゴ乗越の向こうのスゴ乗越小屋までが今日の行程だ。越中沢岳は緩やかな登りだし、余り苦労しなくていいように思えた。

 少し距離は長かったが、越中沢岳山頂直前の雪渓の脇で休憩して昼食にする。楽しみにしていたアズキ缶を開けて、アズキアイスを作ろうとして、この缶詰がイージーオープンエンドでないことに気づいた。最近は缶切りは携行してないので困ってしまった。スプーンを使っても開きそうにない。決め手はストックの石突きで突いて線状に切れ目の穴を開ける方法だった。夏のアルプスでよく作る、アイスデザートをなんとか皆に提供できて面目を保つことができた。
 ここも360度の展望を満喫できた。

     
五色ヶ原山荘    鷲岳と剱・立山連峰を見る 
   
越中沢岳から振り返る五色ヶ原と剱・立山連峰   越中沢岳から南の展望 槍ヶ岳、赤牛岳、雲ノ平、笠ヶ岳、黒部五郎岳、薬師岳など 
越中沢岳から南の展望パノラマ  槍ヶ岳、赤牛岳、雲ノ平、笠ヶ岳、黒部五郎岳、薬師岳など    

 越中沢岳山頂に立つと目の前は一気に切れていてすぐに尖峰がそびえている。スゴの頭(2431m)と呼ばれている。五色ヶ原と北薬師岳の間は今回が初めての私のには全く意識になかったピークだった。
 越中沢岳(2591.4m)からスゴの頭手前のコル(2300m)まで291mの降り、そしてスゴの頭まで120mの登りかがあり、最後にスゴ乗越(2140m)まで280mの降りがある次第だ。
 今回の行程ではほとんどの南斜面、ないし南稜線は険しいガレの路になっていたが、ここでも、291mと280mの降りがあって、正直うんざりした。

 この頃から雲が広がってきた。

 
越中沢岳から見た手前、スゴの頭と薬師岳 

 スゴ乗越からは密な林の中の路をかなりの距離登って行き、キャンプ場に着く。ここから50mほどでスゴ乗越小屋だ。

 写真撮影も多かったが意外に時間を要した行程だった。

 夕刻には雨が降り出した。台風6号が近づいたためだが、この山行ではどこも電波が届かず、台風は従前の予想通り、東寄り関東地方に向かっていると信じていた。気楽なものだ。夜の20時、21時頃強い風雨となった。

 山小屋は最近ネパールははまった女性従業員の手でネパール色がいっぱいで音楽もシタールの弦楽や歌謡が鳴っていた。

 食事は味付けが洗練されていると皆が評価していた。

 

7月28日(日) 小雨後霧 スゴ乗越小屋~薬師岳~薬師山荘

 朝小雨が降っていた。外の庇の下のテーブルとベンチ席で準備した朝食を取ってから出発する。

弱い雨なので、上のコートとザックカバーを付けてしばらく行く。昨夜の強い雨に対して林の中の登路はそれほどぬかるんでいない。
 雨は止むとこなく、途中で雨ズボンも付けて間山を過ぎる。やがて林を抜け北薬師岳への登りとなる。ハイマツの間に岩屑のガレ路、大石の堆積を伝い、またぎそして跳んでの路がずっと続く。間山から3ピッチ、時間35分で北薬師岳の標柱に着く。まわりは濃いガスで視界は20m弱、晴れていれば左に大カールが見下ろせたのだが残念だ。

 北薬師岳から薬師岳へ向かうが、これも岩が重なった路で、スイスイとは進めない。標高差130m余りだが、稜線はガスの中、上へ上へと続き、2ピッチを要して薬師岳山頂に着いた。1坪近い薬師様の祠がある。庇の釣鐘を突くといい音色が霧の中に拡散して行った。

 1962年7月は好天気でしかも空荷だったので太郎兵衛平空荷北薬師岳まで楽に往復したように覚えている。2008年4月末に山スキーで太郎兵衛平から空荷で登った折も天気がよく、下も締まった雪で苦労しなかったが、今回は、天候、荷等もそしてなにより加齢もあって結構辛かった。

   
スゴ乗越小屋    北薬師への岩の路 
   
 北薬師~薬師岳間稜線の大石の堆積した路   薬師岳山頂 

 頂上からは緩やかな広い岩屑の原を降る。踏み跡が分かりにくく、こうしたガスの中では山慣れない人には恐いかも知れない。途中左上に避難小屋を見て、さらに降ると新しい薬師岳山荘に着いた。以前の平屋の小さな小屋に対して、広く大きい小屋になっている。

 この後も、霧は晴れることなく、一切景色は見られなかった。今回宿泊した3つの山小屋の内、ここだけは飲み水は有料だった。ただし、雨水を貯めた非飲用水は無料で分けてくれるので、これをガス等で煮沸して飲料水にすれば問題ない。

ここの夕食も何品もがきれいに盛り付けられて美味だった。

 7月29日(月) 霧後晴れ 薬師岳山荘~太郎兵衛平~折立

 今日は朝からよく晴れるとの小屋の情報が昨夜あってなかば期待する気持もあって、朝3時頃外に出てみると、やはり濃いガスに包まれていた。星の撮影も、頂上に登り返して朝焼けの山々を撮影も未練なくあきらめて寝床にもどる。

 朝食は、途中の太郎兵衛平ですることとして、5時前に小屋を出た。依然霧の中の降りが続く。標高2500mあたりで小沢に出て、右へ曲がるこの沢の縁や沢中をを降る。太郎兵衛平―薬師岳間では唯一歩きにくい路だ。
 やがて沢から出て、薬師峠のキャンプ場に出る。テントが5、6基張られていた。先ほど空荷で勢いよく登って行った若者達のテントもその中にあるらしい。
 路はよくなって、さらに木道になって太郎平小屋に着く。

  折立への時間の目安もついて、ここでゆっくりラーメンなどの朝食とする。小屋の脇にはきれいな水が勢いよく出ていて利用できる。

 五色ヶ原、スゴ乗越小屋そして薬師岳山荘と同じコースでやってきた他のパーティーも続々と太郎兵衛平に到着する。彼らは夕食、朝食とも小屋食なので、朝食前に出発した我々より遅れたわけだ。

     
薬師峠のキャンプ場    太郎兵衛平 
     
太郎平小屋    小屋のそばのニッコウキスゲ 

 太郎兵衛平からは広いゆるやかな道で、岩屑や丸石を敷きつめたところは多少歩きにくかったものの問題なくドンドン降る。
 途中に何ヶ所か休憩のベンチも設置されている。ところどころにニッコウキスゲの群落もあるがやがて森のなかの山路になり、車やバスか駐車している折立に着く。

     
チングルマの羽毛状の実    折立 富山や有峰口から車やバスが入っている 



  空はすっかり晴れ上がり、木かげを外れると陽が強く、暑い。冷たいコーラを飲んだり、靴を洗ったり、リュックの中を整理するなどして、バスの出発まで過ごす。定刻の12時 30分にバスは出て、14時25分に富山駅前に着いた。

 ここで帰宅を急ぎJRで帰るひとと、市内の温泉に入ってから高速バスで帰るひとに分かれ、今回の山行を終了した。

 危険なガレや大石群を渡る路や後半の小雨や霧のなかの歩行など苦労をおかけしましたが全員無事にそして元気に4日間を歩き通せてさすがでした。 (文 清水)

コースタイム

7月26日(金) 7月25日(金)
室堂ターミナル(2433m) 8:30/9:10 行動時間 8:00 大阪 阪急梅田 17:50
室堂山荘(2450m) 9:25 歩行時間 6:50    高速バス
休憩(2620m) 9:55/10:00 休憩時間 1:10 富山駅前 23:25
室堂山分岐(2660m) 10:10    市中ホテル泊
休憩(2730m) 10:35/10:40 GPS ジオグラフィカ
浄土山(2831m) 11:10/11:20 測定点数 286点 7月26日(金)
一ノ越分岐(2840m) 11:40/12:05 歩行距離 6.38km 地鉄富山駅 5:25
竜王岳ー鬼岳コル 12:45 累積登高 770m 立山駅 6:16/7:30
鬼岳東面雪渓アイゼン着用 13:05/13:15 累積下降 695m 美女平 7:37/7:48
鬼岳ー獅子岳コル(2620m) 14:00/14:05 室堂ターミナル 8:30/9:10
獅子岳(2714m) 14:35/14:40
ザラの下り始点(2660m) 15:05
ザラ峠(2348m) 16:05/16:10
五色ヶ原キャンプ場分岐(2410m) 16:45
五色ヶ原山荘(2490m) 17:10
7月27日(土)
五色ヶ原山荘(2490m) 5:50 行動時間 8:55
鳶山(2616m) 6:35/6:45 歩行時間 7:10
2366mコル手前(2380m) 7:30/7:40 休憩時間 1:45
(2470m) 8:20/8:30
(2570m) 9:00/9:35 GPS ジオグラフィカ
越中沢岳(2591.6m) 9:40/9:45 測定点数 303点
(2420m) 10:20/10:30 歩行距離 6.38km
(2420m) 10:45 累積登高 723m
スゴ頭のコル(2300m) 11:20/11:30 累積下降 946m
スゴ頭(2405m) 12:10/12:15
スゴ乗越(2140m) 1315/13:25
スゴ乗越小屋(2140m) 14:45
7月28日(日)
スゴ乗越小屋(2140m) 6:05 行動時間 7:10
(2370m) 6:45/6:50 歩行時間 6:00
間山(2585.4m) 7:35/7:45 休憩時間 1:10
(2720m) 8:30/8:40
(2820m) 9:20/9:30 GPS ジオグラフィカ
北薬師岳(2900m) 10:20/10:35 測定点数 255点
(2890m) 11:20/11:25 歩行距離 6.13km
薬師岳(2926m) 12:10/12:25 累積登高 791m
避難小屋(2880m) 12:45 累積下降 372m
薬師岳山荘(2690m) 13:15
7月29日(月) 7月29日(月)
薬師岳山荘(2690m) 4:55 行動時間 6:25 折立 11:20/12:30
薬師平(2490m) 5:25/5:30 歩行時間 5:05    バス
太郎兵衛平(2330m)朝食 6:40/7:40 休憩時間 1:20 富山駅前 14:30
(2130m) 8:40/8:45    タクシー
(1930m) 9:30/9:35 GPS ジオグラフィカ 満天の湯 15:00/16:00
(1635m) 10:25/10:30 測定点数 308点    タクシー
折立(1360m) 11:20 歩行距離 9:15km 富山駅前 16:30
累積登高 114m    高速バス
累積下降 1412m 大阪 阪急梅田 22:20
7月26日(金)~29日(月)の4日間総計
行動時間 30:30
歩行時間 25:05
休憩時間 5:25
GPS ジオグラフィカ
測定点数 1,153
歩行距離 28.04km
累積登高 2298m
累積下降 3426m


参加者 会員 清水、白柳、山岡 3名

 
 室堂~五色ヶ原~薬師岳~折立トラック地図

この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである。

山行記録トップへ

「山があるクラブ・Ⅱ」 HOME