北アルプス 餓鬼岳(2,647m) 白谷三股~餓鬼岳~東沢乗越~中房温泉
10月9日(木) 晴れ
朝大阪発の高速バスで松本に着き、大糸線で北大町駅で降りて宿のチェックインを済まし、大町山岳博物館へ向う。街中は人通りも少なく、やっと男性を見つけ道を尋ねると「先ほどあちらで熊が出たから注意しなさい。」と言ってそそくさと去って行った。博物館は町の東、丘陵の中腹にあり、下からも眺めることができた。
館の2階のベランダからは街や北アルプスがよく見えるが、稜線は雲に隠れていた。
昨夜出発してこの日有明山へ往復した南井、村上両氏と信濃大町駅f発白馬行きの列車で合流して宿に入る。
10月10日(金) 晴れ
昨夜予約していたタクシーで白沢三股へ。大町はこの数日の熊の出没が大きな話題らしく、朝から消防団の車が巡回していた。どうも3,4頭いるらしく、よく現れる場所もあるらしい。
白沢三股はカラマツ林の中で餓鬼岳登山口の標柱が立っている。ここから左の白沢の路を行く。やがて桟道やハシゴが出てきて、その後右岸を高巻きするように進む。国土地理院の地図の紅葉の滝の位置では滝は無く、さらに250m程先に滝の名標があった。そして右下に一枚岩の上を流れる15m程の滝を見下ろすことができた。
ここから小沢を渡り右へと巻いて登るあたり、いくつもの桟道が続いてこの沢路の最も面白いところだった。さらに行くと正面に魚止ノ滝が見えてくる。落差30m近い。滝の上部はカエデ等が紅葉していた。この滝は左の高巻きする路で通り過ぎる。そこからワンピッチで「最終水場」の標柱のある左から流れ込む沢に出る。標高1450m地点だ。丸太のベンチで一休みしていると男子2名、女子2名の神奈川の山の会のメンバーもやってきた。歩くピッチも速いようなので、ここは先に行ってもらう。これから先が大凪山(2079m)への大登りだ。気温も上がってきて疲れも感じるようになり、思ったようには進まない。実際は山の肩にあたる地点、「大凪山」と書かれた標柱を過ぎて地図上の頂上ピークに着いたのは昼をとおに回っていた。
長い頂稜のわずかな高みで、針葉樹林の中にあって展望はきかないこの頂上で昼食を摂る。とにかく標高差1000mを登り、残すところ、600m余りということで安心する。
白沢三股の餓鬼岳登山口 | 白沢の登り 魚止ノ滝までハシゴ、桟道等が続いている | |
落差15m程の紅葉ノ滝 | 落差30m程の魚止ノ滝 |
大凪山からも樹林の中の緩やかな長い登りが続く。
標高2250mからは一気に餓鬼岳本峰の登りが始まる。「百曲り」と言う名が付いているが、どこからどこまでが「百曲り」なのかは分からない。2320m付近の浅い沢から2470m付近までの細かいジグザクあたりが最も急で途中右上に木々の間から頂上ピークらしいものが見えたが、これは手前の肩の張り出しだった。本物の頂上は「百曲り」を登りきって一旦巻き路になった後の右上はるか先にあった。標高2400m付近は草原で夏はきれいなお花畑らしい。さらに50m急登して、水平の路を行くとようやく餓鬼小屋の物置が見えてきて元気づく。
赤い屋根の小屋本体は稜線の西側に建てられていて、稜線を越すまで見えない。
宿泊の手続きをしてから小屋の背後にある餓鬼岳頂上へ向う。標高差40m程で約5、6分だ。
頂上には小さな祠が祭られているがなによりまさに360度の展望が素晴らしい。南西方向には手前のゲンズリ(中沢岳)の岩のピーク、燕岳、そして常念山脈が続いている。その向うに立っているのはなんと言っても北アルプスの象徴、槍ヶ岳の尖峰だ。さらに右へと視野を向けると裏銀座の野口五郎岳や二つの尖りを持つ烏帽子岳さらに三ツ岳が並んでいる。
北西方向に聳え立つ剱岳と針ノ木岳とそれを取り巻く立山や蓮華岳等の展望の素晴らしさは全く予想外もしていなかった。考えてみれば立山連峰は常念山脈の北端の餓鬼岳からは16、7km程度と近い。雲の様子もよくダイナミックなその峰々にカメラを向けて何度もシャッターを切った。
もちろんその右には鹿島槍ヶ岳も見える。
さらに詳しく見てゆけば穂高岳、鷲羽岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳も指呼できる。水晶岳は分からない。北薬師岳や五色ヶ原も見える。
北北東から南南東にかけては火打山、妙高山、高妻山、黒姫山、浅間山、八ヶ岳、北岳等の南アルプス、そして中央アルプスもうっすら雲の上に浮かんでいる。そして目を凝らすと八ヶ岳と南アルプスの間の真ん中に富士山もかろうじて見えた。
餓鬼小屋 右後方が餓鬼岳 | 餓鬼岳山頂 左後方は三ツ岳 その右に北薬師岳が 覗いている |
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餓鬼岳山頂にて | 餓鬼岳山頂から南のケンズリ、燕岳、大天井岳、そして さらに奥に穂高岳や槍ヶ岳が見える |
北西から北への展望 左手前は峰続きの唐沢岳 後方中央は立山、別山その右奥に剱岳 その右手前の尖峰は針の木岳してその右に蓮華岳 |
この日の小屋の夕食は横川の釜飯の土釜に入れたおでんと炊き込みご飯と中華風サラダで、誰もが納得する美味しさだった。
食事の後の西の空は数分ではあったが見事に赤く輝き、やがて暗く色を失っていった。
有明山の上の夕焼け空 | 双六岳~鷲羽岳~野口五郎岳と夕焼け空 |
この日の夜空は17日の月(前々日満月、皆既月食)が照って明るかった。
10月11日(土) 晴れ
餓鬼小屋の朝は早かった。4時にはほとんどの客が起床して、5時には出発して行った。
我々も簡単な朝食を作り、食べた後、ご来光を見るため山頂へ向った。残念ながら東の地平線近くの空には雲が溜っていて、きれいなご来光にはならなかった。
小屋へ戻ってすぐに出発する。
帰路を燕岳経由の長コースとするか、東沢乗越から降りる短コースにするかの選択があったが、長コースの東沢乗越から北燕岳への登り、2時間はいかにも辛い。この日の内に帰宅することを考えて、全員短コースにすることでまとまる。
ケンズリまでの尾根はいくつかの岩峰があるが、気持ちいいコースだ。ケンズリは4個ほどの岩のピークからなるが概して西側を巻いて過ぎる。最高ピークを過ぎて見返るとなかなかの迫力だ。
南から見た餓鬼岳 | ケンズリの険しい峰 | |
西側の巻き路から見たケンズリ | 2508mピーク付近から見たケンズリ(左)と餓鬼岳(右) |
ここから針葉樹林帯を下ると路は南東方向に変わる。コルの向うに林に覆われた2508mのピークが見えてくる。ケンズリから約1時間、これを登るとさらにまたピーク(2500m)がある。東沢岳かと錯覚するが、まだまだ先だ。2500mのピークから先は樹林は消えて展望がよくなる。北燕岳の稜線が見え、その手前に深く稜線が落ち込んでいる。間違いなくこれが東沢乗越で、その手前、左手に見える肩のような小ピークが東沢岳だ。そこまではまたいくつかの岩峰が続いている。これらの岩峰を越えて進むが、西洋の城砦のような高い岩を何本も立てている面白い岩峰もあって岩登りも楽しい。
東沢岳からは急な下りで脇の木の幹などに助けられながら下り、西側が針葉樹林で東側は開けた東沢乗越(2253m)に出る。「中房温泉5.2km」の標識が立っている。
2508m南の岩峰群 右に見えるピークが東沢岳 | 岩峰を登り越す | |
岩峰を登り越す 短いながらかなりの斜度 | 東沢岳付近から見たケンズリ(左)と餓鬼岳(右) |
ここから350m下の西大ホラ沢出合までは急で、ザレのジグザク路で滑りやすい。左側の沢、西大ホラ沢の左岸には大きなガレ場が広がっていた。昼も近いのでここで昼食として、冷たい沢の水でコーヒーを沸かす。
ここからは沢の流れを渡り返したり、ガレ場の大高巻きなどをして最後右岸を高まきして中房温泉に着いた。
日帰り入湯は本館ではなく、それより100m下の駐車場手前の湯となっている。
8日から有明山登山口に車を置いている南井さんに車を取って来てもらってから入浴する。単純硫黄泉で透明な湯に2日間の汗を流した。
南井さんの車で豊科駅まで送ってもらい、そのまま車で帰る南井さんと村上さんと分かれた。
東沢乗越から350m程下った西大ホラ沢出合(1900m)で 昼食 |
多くの客が登る北アルプスの中でも訪れるひとの少ない静かな餓鬼岳はコースとしては険しく辛いところもある山だったが、その静けさと優れた展望を十分に楽しめた山旅だった。 (清水)
参加者 会員3名(清水、南井、村上)
コースタイム
10月10日(金) | 10月11日(土) | |||
北大町 | 6:30 | 餓鬼小屋(2600m) | 5:40 | |
白沢三股(993m) | 6:45/6:55 | 餓鬼岳(2647m) | 5:50/6:10 | |
紅葉ノ滝 | 8:05/8:10 | 餓鬼小屋(2600m) | 6:15/6:20 | |
魚止ノ滝(1310m) | 8:40/8:50 | ケンズリ (2644m) | 7:40/7:45 | |
最後の水場(1450m) | 9:25/9:35 | 2508mピーク | 8:50/9:00 | |
大凪山(2079m) | 12:00/12:20 | 岩峰群 | 9:40/9:45 | |
2100m | 13:10/13:25 | 東沢岳(2497m) | 10:20/10:25 | |
大曲り(2300m) | 13:55/14:00 | 東沢乗越(2253m) | 10:50/11:00 | |
餓鬼小屋(2600m) | 15:25/15:35 | 西大ホラ沢出合(1900m) | 11:40/12:15 | |
餓鬼岳(2647m) | 15:40/15:55 | 大高巻き | 13:00/13:10 | |
餓鬼小屋(2600m) | 16:00 | 中房温泉(1460m) | 14:05/15:10 | |
豊科駅 | 16:00 | |||
徒歩行動時間 | 6:30-16:00 | 徒歩行動時間 | 5:40-14:05 | |
9:05 | 8:25 | |||
歩行時間 | 7:40 | 歩行時間 | 6:45 | |
休憩時間 | 1:25 | 休憩時間 | 1:40 | |
歩行距離 | 13.94km | 歩行距離 | 10.18km | |
累積登高 | 2237m | 累積登高 | 716m | |
累積下降 | 551m | 累積下降 | 1831m | |
餓鬼岳トラック地図 |
餓鬼岳~東沢岳間トラック地図 |
この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである。
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