秋田の山と渓谷(森吉山、赤水沢・桃洞沢、大平山)(個人)山行記録/関西の山の会会員募集「山があるクラブ・Ⅱ」登山クラブ

山行記録

秋田の山と渓谷(森吉山、赤水沢・桃洞沢、大平山)(個人)山行記録

 テレビだったと思うが秋田に滑めのきれいな渓谷があることを、知ったのはつい34年前のことだった。
 滑めの川床が続き、滝が連なる沢で、紅葉時の見事な写真を見ても、ぜひとも行って見たいと思った。

 沢の名は赤水沢、日本で最も美しい渓流と言われる北アルプス黒部川の支流、赤木沢とよく似た名の渓谷だ。調べてみると隣に桃洞沢と言う渓谷もあり、こちらも、滑め滝が美しいようだ。199910月初めに行った、名瀑、安ノ滝の北西側の尾根を越えた位置となる。

 森吉山の北東山裾に切れ込んだ谷だ。この両渓谷は合流して北流して小又川となり、人造湖、太平湖に流れ込んでいる。小又川も滝が連続する景勝地で太平湖から遊歩道がついている。

 細かい沢の様子が分からず、単独行となるため、地元の、森吉山ネイチャー協会(http://www.kumagera.ne.jp/moriyoshizan/)にガイドをお願いした。

 日程はガイドさんが可能な11日に赤水沢、桃洞沢をできれば周遊、ないしはそれぞれ往復することとした。

 ところが、JALの伊丹―秋田便はコロナ禍のためか、午前便がなく10日出発では、レンタカーを使っても入渓のための森吉山荘に夕刻にまで着けないことが分かった。結局、9日午後出発、北秋田市で一泊して、10日は2度目にはなるが森吉山へ登山することにして森吉山荘泊、11日に赤水沢、桃洞沢へ行き、その後秋田市内泊、翌12日に秋田県中央にそびえる太平山に登って、秋田空港から伊丹へ帰ることとなった。

 思っていたより1日多い日程とレンタカー使用の旅となった。


 森吉山(1454.3m)

109() 晴れ
 
 秋田空港着1430分。秋田道を八郎潟・五城目まで行き、国道288号線で北秋田市米内沢の「あゆっこ温泉」へ着いたのは16:35。なんとか日が暮れる前に着けた。

 温泉と鮎の塩焼き、そしてキリタンポ鍋を楽しんだ。

 

1010() 晴れ
 早い朝食を済まして、730分に宿を出る。紅葉には早いが、さすが北国、秋らしい朝だ。
 秋田内陸縦貫鉄道に沿った国道105号線を南に向けて走る。稲はすでに刈られている。

 阿仁合を過ぎて2km行ったところで左折して森吉山阿仁スキー場方面に向かう。2車線の舗装道路である。12kmほどでゴンドラ山麓駅の広い駐車場に着く。早いので先着の客は少ない。

 山麓駅の標高540mで山頂駅は1200mでスキーコースの標高差700mは大きなスキー場に匹敵するスケールだ。6人乗りのゴンドラにひとりで乗る。一旦下り、それからまっすぐ登って行く。

 ゴンドラから見たブナ林は黄葉が始っていていい感じだ。

 上部では風が強く、ゴンドラ本体が鉄塔にあたるのではないかと心配するくらいで、2回ほど止まった。ゴンドラの乗車が少し遅れていたのは、安全を調べ、検討していたためと思われた。

 振られながら、山頂駅に着くと、「登山者の方は強風のため、ゴンドラの運行停止が早まるかもしれませんので、お早めにお帰りください。」とアナウンスしていた。

   
阿仁ゴンドラ山腹駅   ゴンドラから山頂駅方面を見る 
     
山頂駅近くの色づき始めたブナ林   緩やかな外輪の向こうの森吉山山頂を望む 

 ゴンドラ駅からすぐに森吉山山頂へ向かう路に出る。この路は199910月に下のブナ帯園地駐車場(標高600m)から登ってきた路だ。非常にきれいなブナ林でが見られ、撮った写真をさる審査のプレゼンテーションの表紙に使かわせてもらったものだ。

 これから山頂へ向かう路はゆるい登りだが、低い灌木や草本で展望はよい。花はほとんどが枯れていて、コウヤボウキがひっそり咲いていた。時折エゾリンドウがわずかに鮮やかな青色を残していた。

 正面にゆったりした山頂が見えてくる。シラビソ等の樹木がまばらに生えている。厳冬期、ここも立派なモンスターができるそうだが、ゴンドラで上がって、山頂まで山スキーで登り、樹間が広いモンスターの間を滑り降り、次いで標高差700mのゲレンデを滑降するのは楽しそうだ。

 森吉神社、一の腰方面への分岐を過ぎると本当に気持ちいい高原歩きとなる。飛行機から見下ろすと外輪山を回らしたはっきりしたカルデラ地形が見て取れるが、歩いてみるとただっ広い高原としか思えない。

   
頂上付近のシラビソ林にはモンスターが付く樹氷原になる    色を残したエゾリンドウを見つけた 
     
立派な避難小屋とトイレ     

 阿仁避難小屋、稚児平休憩地を経て最後少し急なガレ路を登ると森吉山山頂だ。

 前回は全くの霧の中で、展望もなかったが、今回は終始、周りの景色を見ながら歩けた。

 山頂には5から10名くらいの人たちが入れ替わり来て、写真を撮ったり、休憩したりしていた。
 私も、のんびり周りを見渡し、北にうっすらとした三角形、岩木山を見つけ、北東には白く輝く八甲田山を見つけ、北東北の山にいることを自分に言い聞かせていた。

 東はもやがかかって、見るところはなかったが、光る田沢湖の湖面と南西の割と近くに、明後日登ると予定の太平山(1170m)が頭を持ち上げていた。

 ゴンドラの時間のことはあるが、登山客もどんどん登って来るのでこちらも昼食も広げて、ゆったりとした山巓の憩いとなった。

   
北に岩木山が見えた   北東には真っ白な八甲田山
 
南西には太平山    森吉山荘の夕食 アルコールは飲み放題

 帰路は往路を引き返す。

 国道105号線を北上し、阿仁前田から山地に入り、小又川を25kmという長距離を遡り、森吉山荘着1630分。

 施設もととのった、きれいな宿だった。食事もよく、アルコールも飲み放題。しかしそんなに飲めるわけがなく、そこそこで終えた。


コースタイム

北秋田市阿仁川あゆっこ温泉 7:30 所要時間
阿仁ゴンドラ山麓駅(540m) 8:30/8:50 ゴンドラ山頂駅~山頂~山頂駅 3:20
山頂駅(1167m) 9:20 歩行時間 2:40
避難小屋 10:00 休憩時間(訓練0:40を含む) 0:40
森吉山山頂(1454.3m) 10:40/11:20 測定機器 スマホ
避難小屋 11:35 ソフト ジオグラフィカ
山頂駅(1167m) 12:20 測定点数 151
阿仁ゴンドラ山麓駅(540m) 12:40/12:55 歩行距離 5.11km
阿仁前田 13:20/13:30 累積登高 344m
森吉山荘 14:00:/14:10 累積下降 344m
太平湖 14:45/15:30 ソフト ジオグラフィカ
森吉山荘 16:00

 
森吉山トラック地図 

 

 

赤水沢、桃洞沢

1011() 晴れ

 朝からスッキリ晴れて、気持ちいい。

 730分、ガイドをつとめてくれる森吉山ネイチャー協会の宮野さんが、宿の森吉山荘前に来てくれる。
 この協会を立ち明けた本人で私よりひと回り若い。背丈とも大きく山慣れたひとだ。

 沢用の靴や装備品を確認してから、宮野さんの車で出発する。コースは赤水沢―桃洞沢周回はやめて、赤水沢と桃洞沢をそれぞれ往復することにしたいとの申し出を了解する。

 車で25分、森吉山野生鳥獣センターに着く。森吉山を囲む地域はマタギの里であり、ツキノワグマがその代表だが、北海道や青森県に棲む大型のキツツキ、クマゲラも知られている。

 すぐに、まず赤水沢に向けて出発する。黒石川を高く桁を架した橋で渡る。そこからミズナラやブナの林の中を行く。

 小又川の支流、ノロ川に沿った路だが、川とは離れている。上谷地では、林の中に湿地や小池が散在している。陽が正面から刺してまぶしい。池の水面も光っておもしろい。

 やがて桃洞沢と赤水沢・玉川温泉方面の分岐に着き、左側の赤水沢へと進む。すぐに赤水沢の入渓口に着く。川幅いっぱいの黒い凝灰岩の川床の上を、やはり川幅いっぱい軽やかに流れが広がっている。水深は10センチで岩の割れ目の深いところで780センチだろうか。

 数十メートル行く度にと広い滑滝があって川の標高を上げている。直径11.5mの甌穴も所々に見える。

 これから咲き沢の中をジャブジャブと気持ちよく遡る。時折、左右の岸の岩に上がって深みを避けることもあるが、ほとんど流れの中を進める。
 子供の頃の水遊びを思い出す。岩は多孔質なので岸や岩上に水が湧いていて、そこを好む種類の苔が覆っている。水温が年間通して変わらない環境だからだろう。

 谷の両側の斜面はきれいなV字谷を作っていて、斜面の樹々は紅葉しはじめている。今年は、紅葉が一週間程遅れているらしい。真っ赤に染まったヤマモミジ以外はもう一週間先が見頃だろう。所々V字谷はむきだしの岩壁となっている。岩壁は川床と同じ岩からなっている。ただし色は薄い褐色だ。高い一枚岩の斜面は屋久島の千尋の滝の壁にも似ている。

 この川床や壁の岩はすべて東隣の玉川カルデラの火砕流の堆積によるものと宮野さんが教えてくれる。森吉山のものかと思っていたので驚いた。
今も玉川カルデラは活火山の焼山や後生掛温泉が盛んに水蒸気を上げている。
 均質な岩なので、こうした滑めと壁が形成されたのだろう。

     
赤水沢へ入渓   川床には直径1~1.5m、深さ1m程度の甌穴も見られる
 
緩やかな滑の流れ   広い滑め 
   
滑滝に甌穴ができている 田中陽希氏が入ってみたとか   小滝がいいアクセントになっている 
     
滝と滑が次々に現れる    

宮野さんが、「ちょっと寄り道します。」と言って正面の急傾斜の枝沢に入った。小滝で仕切られた12個の甌穴が連続している珍しい場所だ。「ブラタモリ」のタモリがきたら大喜びしそうだ。

 赤水沢へ戻り、また滑沢を遡る。紅葉の斜面の上にはキタゴヨウ(ゴヨウマツの北方型)の深い緑と澄んだ青空が色鮮やかだ。至福の時が続く

 やがて正面に大きな滑滝が現れる。高さ20m以上ありそうだ。すだれ状の流れは、Kの字を左右反転したように流れている。兎滝だ。やはり月の兎とは左右反転ながら月左に杵を持って搗いているように見えることからこの名がある。

 滝の右の壁に、滝を登るために彫られたいくつかのステップの穴が見える。正面からはその壁はかなりの傾斜に思えた。確保を取りながら登らないと、危ない気がする。

 この滝を眺めながら昼食とする。果物もコーヒーも美味しかった。


 兎滝を赤水沢の最後として、沢を引き返す。上流にはまだ小さな滝が連続している。

   
 黄葉も進む   12個の甌穴が滝状に連なった枝沢 
 
甌穴が侵食されて滝になっている   水たまりのコシアブラの落ち葉 
 
赤水沢最大の滝、兎滝 登るのは右壁面を登る   両側の壁もきれいな平面状
 
岸の樹々も渓谷の美を盛り立てている     ブナの幹ににつけられた球磨の爪痕 思った以上に鋭い爪先

 桃洞沢との分岐まで戻る。5、6名の沢探勝者に会う。赤水沢では人に会わなかったが、短かな桃洞沢は入る人が多いようだ。

 沢筋を遡るとすぐに正面に桃洞滝が現れた。形から雌滝とも言うが、複雑な造形だ。落差は50m程度と言われている。最もよく見える右岸の岩の上に上がる。逆光で滝の水が暗くて目立たないのは、少し残念だった。この滝も左岸にステップの穴が彫られていて、のっ越せるようになっている。これも確保用に30m以上のザイルが欲しいところだ。

   
エゾリンドの花    桃洞沢入口 
 
桃洞沢最大の滝、桃洞滝 落差50m近い 右面上部に登攀の
ためのステップ穴が彫られている
  桃洞滝 
   
桃洞沢入口付近    ブナの大木 

 滝を鑑賞してから沢を下り、2kmの林を抜けて、鳥獣センターへ戻った。

 森吉山荘で今回渓谷の自然や撮影ポイント等を親切に教えていただいた宮野さんと分かれてから、荷を整理して、阿仁前田から上阿仁を経て国道288号線そして秋田道を通り、秋田駅近くのリッチモンドホテルへ向かい、すでに真っ暗になった19時前に着いた。



コースタイム

森吉山荘 7:30 所要時間(森吉山荘~同) 7:55
森吉山野鳥鳥獣センター 7:55/8:00 鳥獣センター~同 6:55
上谷地 8:30 歩行時間 6:15
赤水沢、桃洞沢分岐 8:50 休憩時間(訓練0:40を含む) 0:40
赤水沢 (630m地点) 9:20 測定機器 スマホ
655m地点 9:50/9:55 ソフト ジオグラフィカ
左俣、右俣分岐(669m) 10:15 測定点数 398
左俣 12段甌穴(680m) 10:25 歩行距離 14.87km
左俣、右俣分岐(669m) 10:30 累積登高 429m
右俣(685m) 11:00 累積下降 429m
兎滝 11:05/11:30
左俣、右俣分岐(669m) 12:00
635m地点 12:40
赤水沢、桃洞沢分岐 13:00
桃洞滝 13:40/13:50
赤水沢、桃洞沢分岐手前近道 14:10
本堂合流 14:15
森吉山野鳥鳥獣センター 14:55/15:00
森吉山荘 15:20


 
赤水沢、桃洞沢トラック地図 




太平山(1170m)

1012() 曇り時々小雨

 ホテルの自室で朝食を摂って、太平山へ向かう。

 今日も秋田市から登山口までは30kmほど、ほとんどを旭川の谷すじの県道15号線を遡る。

 山裾の太平山リゾート公園の中に入り込んで、20分程、タイムロスした。開発地で道が入り組んでいて分かりにくい。車のカーナビには登山口の旭又への道は表示されず、ちょっとあわてた。

 リゾート公園手前で分岐している左の細い道が正解で、旭川に沿ったクネクネした1.5車線の道だ。旭又まで行っている。途中仁別森林博物館があるが、開いてないようだった。そこから5km行ったとところにトイレ小屋とキャンプもできる広場があり、駐車場スペースになっている。車が停まっていて、工事の人、4名が働いていた。登山口の木の橋と登山路のステップを更新しているらしい。 

 このあたりから、天気は急に悪くなって、あたりが暗くなってきた。天気予報通り、雨模様になりそうだ。

 登山口からすぐ、左に細く登り路が分かれていて、北東側にある赤倉岳登山口と書かれている。しばらくは、杉林の中のゆるやかな道で、両側にミズ(ウワバミソウ)が一面に繁っている。直線の道には昔、インクラインがあったそうだ。京都蹴上のそれは舟だが、ここでは森林鉄道の貨車をロープで上げ下げしたとの説明が書かれていた。

   
旭又登山口、キャンプ場 橋などの更新工事中   昔インクラインが敷設されていた跡が道になっている 
 
弟子還沢を渡る橋    御滝神社 

 弟子還沢の橋を渡ると登り路となって、尾根筋に出たところが御滝神社(410m)で小さな祠がある。ここでひと休みする。

 これから御手洗(832m)まではまっすぐな急な登りで、特に最初の150mの標高差の登りは急だ。

 御手洗は小さな流れがある。杓も置かれている。そして江戸期後期の蝦夷地や奥羽地方の旅行家、菅江真澄も訪ねたということで「菅江真澄の道」の標柱も建てられ、石碑や赤いチャンチャンコを着た2体の地蔵さんが立っている。

   
御手洗  小さな流れのわきに「菅江真澄の道」と書かれた
白い柱が立つ
  赤い雨具を羽織った地蔵さん 
     
秋田港方面    コルから見た山頂方面 紅葉は進んでいる 

 御手洗からも旭岳と太平山の鞍部までは急な登りは続く。途中秋田市の北にある秋田港周辺が見えたがその後ガスが濃くなり、折角の紅葉にベールがかかって残念だ。

 鞍部に着くと流れるガスの間に、山頂の小屋が見え隠れした。

 ステンレスだろうか、その大鳥居を抜けて、最後の20m近い階段をがむしゃらに登って頂上に着いた。三吉神社の神殿、30人が泊まる宿泊所、そして携帯トイレの小屋などがある。山頂からの展望は素晴らしいということだが、ガスで全く何も見えない。

 持ってきたバンと果物、そして牛乳を食べて、帰路に着いた。路は歩きやすいので、短い時間で登山口に着けた。

   
山頂直下から見た山頂の宿泊小屋と神社   三吉神社 
 
 宿泊小屋 2012年に再建された 30人泊まれる   標高800m辺のブナ林 


 秋田中央ICから秋田空港に戻り、予定のフライトで帰阪した。

 今回はコロナ禍が一旦落ち着いた時期で。宿代はGo Toトラベルで35%カットされ、クーポン券ももらえるという特典があり、ありがたかった。(文 清水)


コースタイム

秋田市 リッチモンドホテル 7:30 所要時間(旭又~山頂~旭又) 5:40
旭又登山口(295m) 8:30/8:35 歩行時間 5:15
御滝神社 9:15/9:20 休憩時間(訓練0:40を含む) 0:25
675m地点 10:00/10:05 測定機器 スマホ
御手洗(832m) 10:00 ソフト ジオグラフィカ
太平山山頂(1170.63m) 11:55/12:05 測定点数 273
御手洗 12:45 歩行距離 8.40km
700m地点 13:10/13:15 累積登高 953m
御滝神社 累積下降 953m
旭又登山口 14:15/14:30 ソフト ジオグラフィカ
秋田中央IC 15:20
秋田空港 16:00/18:20
伊丹空港 19:45

太平山トラック地図 

参加者    会員1名(清水)

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